DMでいきなり告白するZ世代…「あー、たまにそういうイタイやついるよね」と笑っているけど、そもそもほとんど話したことのない人からの告白って変?
ファーストコンタクトがDM
まず、直接面と向かって会話をする必要がありません。無論、連絡先の交換も不要です。SNS内にて、気になる生徒のアカウントを探索してフォローし、あいさつがてらのDMでもすれば、それでファーストコンタクトは完了です。 こんな便利な道具が中高生時代にあったら、今は大人の方々も喜んで使用したのではないでしょうか。 あえて言えば、面と向かって話したことがないのに、平気でDMをしてしまうという感覚は、デジタルネイティブとそれに近い世代でないと分かりにくいかもしれません。 友人や恋人とのファーストコンタクトがDMだったという話は、ごくごくありふれたものになっていて、そのこと自体はZ世代にとって自然なことになっています。 DMで連絡を取り合い一定の信頼関係が構築されたら、次はLINEアカウントの交換や無料通話といった次の段階に移り、そして実際にリアルの世界でも交流を深めることで交際に至るというわけです。 なかには、通話をしながら一緒にゲームができるという便利なアプリを使い、四六時中ネット上で交流しているうちに、リアルの世界での会話がほとんどないまま付き合うことになった、という事例もあるようですが、さすがに稀なケースでしょう。 「#春から〇〇生」「#春から〇〇大学」というSNS内にて見られるハッシュタグもまた、そんな今日的なファーストコンタクトの一つです。大学や高校に合格した中高生が、入学前に友人(候補)を作ってしまおうという試みです。 もちろん、このハッシュタグがあるからといって、誰彼構わずフォローするということは通常ありません。SNS内に投稿されている動画・画像・文章に目を通し、自分との相性をチェックしたうえでフォローするのが一般的です。 入学前から、自分と波長が合いそうな人たちと接触できてしまうとは、なんて便利な世の中なのだろうとも思います。
リアルとネットは陸続き
ここまでの記述から分かるように、今を生きる子供たちにとって、ネットとリアルの境界線は曖昧というよりも、もはや陸続きになっています。 リアルな世界でのコミュニケーションがネット上でも引き継がれるのはもちろんのこと、ネット上での交流がリアルにおける交流にもつながっていきます。 以前から、ネット上では同質性の高い集団が組織されやすいことが指摘されてきましたので、特段の説明は不要だと思います。 そして、その高い同質性が良いことずくめでは全くないこともまた、衆目の一致する所でしょう。 そんな毒にも薬にもなる高い同質性は、リアルとネットの境界が不明瞭な今、容易にリアルの世界にも引き継がれます。 リアルの世界で交流をする前に、ネット上の直接・間接的な交流という段階を経るならば、これまで以上に速やかに、そして特色が鮮明になった集団(共同体)がリアルの世界に出現することになるのは当然です。 写真/shutterstock
---------- 物江潤(ものえ じゅん) 1985(昭和60)年、福島県生まれ。早稲田大学理工学部社会環境工学科卒。東北電力、松下政経塾を経て、2024年10月現在は福島市で塾を経営する傍ら社会批評を中心に執筆活動に取り組む。著書に『空気が支配する国』『デマ・陰謀論・カルト』など。 ----------
物江潤
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