<春に輝け>東海大相模の挑戦’20センバツ/中 エース候補、多士済々 弱点克服図り投手陣底上げ /神奈川
安定した投球でチームを引っ張ってきた諸隈惟大投手(2年)が、マウンドでつらそうな表情を浮かべた。昨年10月の関東地区大会の準々決勝、習志野(千葉)戦。一回は2死一、三塁のピンチを招きながら、なんとか後続を断ったが、二回も思い通りストライクゾーンに入らない。4四球を許すなどして4失点。先制したチームはあっという間に逆転されてしまった。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 新チームのエースは、失意のうちにこの回途中でマウンドを降りた。 ◇ ◇ 制球力があり、直球と切れのあるスライダーを織り交ぜ、打たせてアウトを取るピッチングが持ち味だ。昨夏の神奈川大会で追加登録された「背番号20」は、7試合中3試合で先発を任された。自責点0の活躍を見せ、甲子園では18人のメンバーに入った。 東海大相模は夏の甲子園に出場したため、新チームの立ち上がりが遅く、少ない時間で新体制を作り上げる必要があった。エースナンバーを託された諸隈投手は、関東大会の前に行われた県大会の全6試合で登板。5試合で先発し、チームを勝利に導いた。門馬敬治監督は「秋は諸隈が頑張ってくれた」と話す。 習志野戦は「自分がいいピッチングをして勝ちたいという欲が出てしまった」という。空振りを取ろうと、直球で押し切る投球を続けてしまった。自信があるはずのコントロールが定まらなかった。「日本一になるため、チームの勝利のため」と全力を尽くしてきた、本来大切にしている姿勢を貫けなかった。 諸隈投手と交代した金城龍輝投手(1年)は九回途中までのロングリリーフで粘投し、チームの逆転を呼び込んだ。4強入りを決めた勝利とは裏腹に、諸隈投手に笑顔は少なかった。 ◇ ◇ 関東大会準決勝で初めて公式戦のマウンドに立った山村崇嘉主将(2年)、昨夏の甲子園3回戦で先発して好投した石田隼都投手(1年)など主戦候補は多い。金城投手も「エースナンバー、ほしいです」とその座を狙っている。 先発のマウンドを目指す投手らはそれぞれ弱点の克服に努め、必死にトレーニングを重ねている。「みんな力が上がった。あとはここからもうひと伸びする投手がいれば」と、門馬監督は期待する。 投手陣の底上げが、チーム力のアップに直結することは諸隈投手もわかっている。それでも、背番号1へのこだわりは人一倍強い。この冬、取り組んだのはストライクゾーンで勝負する意識を常に持った投球だ。関東大会後は走り込みなどで下半身を強化した。球速も上がり、確実な手応えを感じている。 「自分がマウンドに立てば、勝てると思われる投手になりたい」。チームメートから信頼される絶対的な存在が、エースだと信じる。【池田直】