温暖化防止資金をどう捻出するか、COP29で「暗号資産」「超富裕層」「プラスチック&ポリマー」への課税が議題に
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 国際課税タスクフォース [バクー発]カリブ海の小国バルバドスのミア・モトリー首相やエマニュエル・マクロン仏大統領らが主導する「開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォース」(以下、「国際課税タスクフォース」)は11月14日、ビットコインなどの暗号通貨に課税すれば52億ドル(約8140億円)を生み出せるとの報告書を発表した。 【写真】今年7月、テネシー州ナッシュビルで開催された「ビットコイン2024」で演説するトランプ氏。ビットコイン支持を明確にしたトランプ氏が大統領選で勝利するとビットコイン価格はたちまち急上昇した アゼルバイジャンの首都バクーで開かれている国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)の最大の焦点は、途上国への気候変動対策資金に関する新規目標の設定だ。世界連帯賦課税は、年間1兆ドルとも5兆ドルとも言われる気候資金ギャップを埋めるための選択肢の一つ。 同タスクフォースは元仏外交官で2015年のパリ協定の立役者の1人、欧州気候財団のローレンス・トゥビアナ最高経営責任者(CEO)に率いられる。フランス、バルバドス、ケニア3カ国が昨年のCOP28で気候資金を生み出す革新的な手段を見つけるために立ち上げた。 報告書は化石燃料、航空、海上輸送燃料、炭素税や排出量取引などのカーボンプライシング、金融取引に対する賦課税の具体的な政策オプションを提案。その中で温室効果ガスの排出量と汚染を削減しつつ公平に資金を調達する可能性を秘めた3つの秘策を披露している。
■ トランプ復活でビットコイン価格は暴騰 その一つが暗号通貨への課税だ。暗号通貨は急速に重要資産となり、時価総額は3兆2000億ドルを突破。米証券取引委員会(SEC)もビットコインの現物上場投資信託(ETF)を承認。推進派のドナルド・トランプ次期米大統領の復活でビットコイン価格は一気に暴騰している。 暗号通貨のマイニング(採掘)には大量の電力を要するため、環境への負担も大きい。国際通貨基金(IMF)によると、採掘のための電力需要はオーストラリアやスペインの一国並みに達し、2022年時点で世界の二酸化炭素排出量の0.33%を占めるに至っている。 ある試算によれば、ビットコインの採掘は昨年、世界のエネルギー需要の1%近くに達した。ビットコイン1枚を採掘する電力使用量は一般的なガーナ人の約3年分、ドイツ人の3カ月分に相当する。採掘に使うGPUが過熱して火災が発生するケースも過去に報告されている。 昨年3月、米国では暗号通貨採掘者の電力使用量に30%課税せよとの提案があった。カザフスタンでは採掘者に対して1キロワット時当たり1~25テンゲ(0.002~0.056ドル)課税することを採択するなど、気候変動対策として暗号通貨に課税する動きが出ている。