高齢者施設で要介護度改善の取り組み進む 膨張する介護費を抑制、現役世代の負担軽減も
現行制度では65歳以上の要介護認定を受けた高齢者が所得に応じて介護費の1~3割を自己負担し、残りを40歳以上が支払う保険料と国・自治体の公費(税金)で折半。施設の種類などにより料金体系が異なるが、当然ながら多くの介助が必要になる重度の要介護者ほど、介護費は高額になるのが基本だ。
厚生労働省によると、同施設のような自治体から指定を受けた「特定施設」では、施設に支払われる介護費が定額で、1カ月(30日)当たり24万3900円となる。1割負担で要介護5の入居者の場合、自己負担額は2万4390円、残り9割を保険料と公費で折半することになる。
一般的に要介護度が下がれば介護費も減り、現役世代などへの負担も軽減される。しかし、取り組みが進んでいる施設は限られているとされる。
それはなぜか。多くの施設で勤務経験があるという前出の施設幹部は、リハビリに関して医師の監修を受けず、知識が不足している事業者も多いことを指摘。また、介護業界関係者は「現制度では苦労して要介護度を改善しても、それだけ施設への報酬は減る。人手不足もある中で頑張ろうとはならない」と話す。
だが、サンケイビルウェルケアの担当者によると、実績が評判を呼び、態勢強化のため入居者の負担額に上乗せしても、「ほぼ満室の状態が続いている」と説明。また、入居者が入院中はその間の介護費が施設に支払われず収入が減るが、「元気になることで入院する入居者が少ない」と好循環が生じていると明かす。
■都は要介護度改善で報奨金
さらに行政も具体策で背中を押す。都は昨年度から「取り組みを進める必要がある」(担当者)として、入居者の要介護度の維持・改善を進めた施設に対し、最大で40万円の報奨金を支給する制度を始めた。
厚労省の統計では、介護費の総額は高齢化で増加の一途をたどっており、2023年度は約11兆5千億円に達した。この15年間で2倍近くに伸びた。高齢者自身に加え、現役世代に負担が重くのしかかっている。