高齢者施設で要介護度改善の取り組み進む 膨張する介護費を抑制、現役世代の負担軽減も
要介護高齢者にリハビリなどのサービスを提供する介護施設で、高齢者に入居時よりも元気になってもらおうとする取り組みが進んでいる。自治体が認定する必要な介護のレベルを示す「要介護度」を巡っては、改善すると施設側への報酬(介護費)も減額されることが、取り組みが本格化しない一因とされる。だが、取り組みによって入居希望者が集まるなど好循環が見込め、新しい制度を導入して後押しする自治体も出てきた。介護保険制度を支える現役世代らの負担軽減に向け、取り組みの拡大が求められる。 【ランキング】全国の60歳以上男女が振り返る「やっておけばよかったこと」ベスト3 「お好きなポテトチップスですよ。食べてくださいね」。東京都世田谷区の介護付き有料老人ホーム「ウェルケアガーデン馬事公苑」(定員81人)の食堂。施設スタッフから声をかけられた入居者の女性(94)は、ポテトをゆっくりと口に持っていき、咀嚼(そしゃく)した。その様子を周りから見られているのを恥ずかしそうにほほえんだ。 ■リハビリで寝たきりから改善 同施設によると、くも膜下出血で倒れた女性は昨年8月末の入居当初、寝たきりで表情はなく、会話もできなかった。食事はチューブを体内に挿入して栄養剤を直接注入していた。 同施設はベッドから離れる離床時間を増やすことを徹底した。スタッフは「寝ていると覚醒する時間が短くなり、体も固くなって弱っていく。毎日少しずつでも進めることが重要だ」と説明する。スタッフが脇を抱えて立つリハビリなども進め、現在は約5時間の離床が可能となり、歩行器で20メートルほど歩けるという。 他の施設も検討したという女性の長女(51)は「ここが最もリハビリに意欲的だった」と明かし、「また(女性が)孫と一緒にごはんが食べられるようになれば」と期待する。 現段階で女性の要介護度は最も重度の「5」だが、同施設の幹部は「要介護4への改善も視野に入った」と語った。 同施設を含め8施設を運営するサンケイビルウェルケア(東京)によると、要介護度が改善した入居者数は今年5~7月だけで8施設計10人に上る。 ■介護費の7~9割を社会で負担