自転車より遅い超赤字「JR芸備線」は残すべき?廃止?…乗って考えた 「ここで暮らせるのか」嘆く住民、初協議の行方は
明け方、雪が積もり、人けのないプラットホームに始発列車の力強いディーゼル音が響き渡る。「超赤字」「自転車より遅い」と評されるJR芸備線。1月下旬、私は広島県庄原市の備後落合(びんごおちあい)駅から三次行きの始発列車に乗り込んだ。 【写真】JR芸備線 備後庄原駅付近を走行する車両
芸備線は、山深い中国山地を貫き、岡山県新見市の備中神代(びっちゅうこうじろ)駅と広島駅の159・1キロを結ぶ。かつては山陰と山陽をつなぐ中心路線として栄えた。だが今、岐路に立たされている。 3月26日、全国初となる「再構築協議会」の開催が迫る。JR西日本や国、沿線自治体などが存廃などを協議する場だ。始発から終点まで乗って沿線で話を聞くと、過疎地が置かれた深刻さが伝わってきた。(共同通信=本間優大) ▽まるでスクールバス 備後落合駅発、三次行き1両のワンマン運転の列車は、午前6時44分、前日の大雪をものともせず、うなりを上げて走り出した。途中駅で次々と通学の生徒が乗り込み、車内は25人ほどに。大人の姿はなく、スクールバスにいるような感覚だ。 高校1年生の女子は、通学で塩町駅(広島県三次市)に向かっていた。中学まではバレーボール部。高校でも続けたかったが、部活動をすると午後5時台の最終列車に間に合わない。「バスでも鉄道でもいいから、ちょうどよい時間に設定してほしい」とぼやいた。
▽「高速バスの方が便利」 午前7時28分、備後庄原駅(庄原市)に到着。通学の生徒たちに混じり、私も下車した。窓口で切符を回収していたのは、芸備線の元運転士清原正明さん(69)。退職後、市が管理する駅で働く。 「昔は急行も走ったが、今は徐行区間が多く自転車よりも遅い。保線状態がよければもっと速く走れるのに」と嘆く。この日の備後落合行き始発列車の乗客は0人だったという。 駅前で客待ちをしていた60代のタクシー運転手の男性に話を聞いてみた。「広島市中心部に出るには、高速バスの方が早い。列車も本数があれば便利なのに」 いったん備後落合駅に戻ると、午前9時12分発の三次行きが停車中。運転士によると「この時間に乗る人はほぼいない」。私も乗車せず、列車は無人のまま出発。ホームに静寂が戻った。 ▽ガイドは元国鉄の機関士 「駅名の由来は、3方向から列車が落ち合うということからです」