自衛隊が60年以上行っている「共同訓練」とは?
2016年6月、アジア太平洋地域の国防大臣などが多数参加するアジア安全保障会議がシンガポールで開催されました。日本からは中谷防衛大臣が参加し、会議の中で、地域の平和と安定のために日本が行う活動に関する新しい方針を示しました。その方針が「ハイブリッドな国際防衛協力」です。 各種の活動を有機的に組み合わせようとするこの方針の柱とされるのは「能力構築支援」、「共同訓練」、「防衛装備・技術協力」と呼ばれる3つの活動です。普段あまり見聞きする機会がないこれらの活動ですが、実は、政府は様々な意図を持って活動を進めており、それを担う現場では幾人もの隊員が汗を流しています。 そこで、「ハイブリッドな国際防衛協力」という新たな方針が示されたこの機会をとらえ、今後複数回に分けて、支援の柱とされる3つの活動について紹介していきます。第2回目となる本記事では、自衛隊が行う「共同訓練」に焦点を当てます。 ◆ ◆ ◆
「わが国は、憲法の枠内で必要最小限の防衛力を保持するということなので、アメリカ以外の国と、防衛上緊密な関係を持つことは慎まなければならない」。1987年、栗原防衛庁長官(当時)が語った言葉です。それから約30年。冷戦が終わり、米国同時多発テロを経て、中国の海洋進出など様々な安全保障上の課題に直面している日本は、米国以外の国々とも積極的に防衛上の関係を深めています。 この動きを象徴しているのが、「共同訓練」です。この場合の共同訓練とは、親善以外の主目的をもって、自衛隊が他国の軍隊と一緒に訓練することです。約60年前、日本は米国との訓練を始めましたが、冷戦後は信頼醸成の観点も含め、同盟国以外の国々とも訓練を行ってきました。共同訓練の内容は多岐にわたり、意志疎通を図るための基礎的な訓練から、ミサイルなどの軍事的脅威を念頭に置いた実戦的な訓練まであります。共同訓練は、災害から有事に至るまで、幅広い課題に日本と相手国が協力して対応できる基盤を作ります。