「妻の葬儀で聞こえにくさを痛感」70代男性の実例をもとに<補聴器>購入から活用までのプロセスを専門家が解説
教えてくれた人
認定補聴器技能者・田中智子さん うぐいす補聴器代表。大手補聴器メーカー在籍中に経営学修士(MBA) を取得。訪問診療を行うクリニックの事務長を務めた後、主要メーカーの補聴器を試せる補聴器専門店・うぐいす補聴器を開業。講演会や執筆なども手がける。https://uguisu.co.jp/ 【画像】ずっと踏み出せずにいた頑固な父に、うぐいす智子先生がアドバイス!イラストチェック
「思い込み」が人生を左右することも?
「その人の人生は、その人の思い込みが決めている」 お客様と接する中で、そんな風に思うことがあります。聞こえにくくなっているのに「年だから仕方ない」「ちょっと我慢すれば大丈夫」とそのまま過ごしていたり、「補聴器をつけていることを周囲の人に知られたくない」と、プライドが邪魔をしていたり。 しかし、何も対策せずにいると「どうせ聞こえないから」「どうせ自分なんて」と諦めの気持ちや自分の殻に閉じこもってしまうことも…。知らず知らずのうちに人と会いたくなくなって、急に老け込んでしまうということにも繋がりかねません。 そこでお伝えしたいのが、補聴器を使ったことでこれまでとは違った人生をスタートさせたかたがいらっしゃるということ。私が補聴器をおすすめした利用者さんの実例をご紹介したいと思います。
父親を想う娘さんからのメッセージ
「父が初めての補聴器を探しています。日常生活で不自由を感じているものの、本人はなかなか踏ん切りがつかないようです。ぜひそちらで相談したいので、ご連絡させていただきました。予約できるタイミングはありますか?」 30代の娘さんは結婚して実家を離れ、70代のお父様はひとり暮らしをされています。お父様は聞こえにくくなっているのにプライドが邪魔をして、補聴器に対してずっと興味があったにも関わらず、一歩前に踏み出すことができなかったそうです。 心配した娘さんから、弊社のホームページにお問い合わせのメッセージが届きました。 詳しくお話を伺ってみると、Aさんは奥様を亡くされて葬儀の喪主を務められたそうです。 葬儀といえば、親族や参列者がみなさん小声でひそひそとお話をされています。そして、喪主となれば会場のスタッフのかたともやりとりなければなりませんでもすべて小声でのやりとりで、何度も聞きかえしたり、手順と違うことをしてしまっているお父さまの姿があったそうです。 「あれ?もしかして聞こえてない?」と初めて気がついたそうです。 父とは離れて暮らしているため、なかなか難聴には気がついてあげられなかった。母の葬儀で聞こえにくそうにしている姿を見た娘さんは、どうにかしてあげたいと思ったそうです。 しかし「父は昔から頑固者だから、指摘しにくいな。補聴器をすすめても拒否されるだろうな」と思って、しばらくは言い出せずにいました。 お母様の四十九日の法要が終わり、少し落ち着いたころに父娘でゆっくり話すタイミングがありました。そこで娘さんは、「母の葬儀のとき、聞こえづらそうにしていたけど…」と、思い切って補聴器の話を持ちかけてみたそうです。するとお父様が取った行動は――。