ソフィア・コッポラのビューティ哲学と、コラボリップ誕生の秘話。
ー プロから学んだコツはありますか?
メイクアップアーティストのディック・ページが、忙しい人のためにちょっとしたコツを教えてくれました。頬と鼻筋にほんのちょっぴり、リップの赤を伸ばすと顔がシャキッとします。
ー ビューティにまつわる最初の思い出は?
10代の頃はシャネルの香り、「クリスタル」を愛用していました。とてもシックな香りでお気に入りでした。若い頃は香りとか、楽しいパッケージやカラフルなメイクに目が向きがちです。当時はいまほど選択肢が多くありませんでしたが、人生のあの時期にいろいろ試せたことは楽しい思い出です。特に1980年代はメイク黄金時代でした。
ー メイクで失敗した経験はありますか?
誰にでもあるのでは? いずれにせよ、当時インスタグラムがなくて良かったです。秘密にしておきたいことはありますからね!
ー 映画監督の娘として、独特の美意識が育まれたと思います。若い頃、あなたのアイコンは誰でしたか?
父の友人に女優のオーロール・クレマンやキャロル・ブーケ、アンジェリカ・ヒューストンがいました。彼女たちは私にとって憧れのマダムのような存在でした。特にオーロール・クレマンとキャロル・ブーケはまさにシックなパリジェンヌそのものでした!
ー SNSの影響力が強いいまの時代、ビューティに関して、母親としては18歳と14歳の娘ふたりにどのようなことを伝えたいですか?
難しいですね。娘たちはそれなりにいろいろ経験し、TikTokに多くの時間を費やしています。あんなふうに常時広告にさらされて消費欲をかきたてられるのはどうかなと思います。娘たちには、やりすぎるとロクな結果にならないと言いたいですね。シンプルがいちばんです。たくさんの製品を同時に試しすぎると肌が荒れてしまうかもしれません。でも娘たちがやりたくなる気持ちも理解できます。
ー 監督の映画は作品ごとに異なる女性美が登場します。『プリシラ』では60年代風アイライナー、『ロスト・イン・トランスレーション』ではピンクヘア、『マリー・アントワネット』ではチーク。それは想像力から生まれるのでしょうか?
人物像にはディテールが大事だと思っています。私の映画の多くはアイデンティティをテーマにしています。アイデンティティとは自分をどう見せるかという点から始まります。服装はもちろん、ヘアスタイルやメイクも重要です。『プリシラ』を観て楽しめるのは、それが現実ではなく、私たちの日常生活とはかけ離れた世界の話だからでしょう。彼女の人生をたどり、この女性を象徴するシグニチャーとしてアイライナーを選びました。
ー くつろぎたい時は?
頭をクリアにしてリセットしたい時は散歩に出かけます。特にニューヨークでは。スポーツはあまり好きではないけれど、時間がある時はハタヨガもいいですね。マッサージやスパトリートメントの施術も大好きです。慌ただしい暮らしの中で、リラックスする時間を取るのはいいことだと思います。