薄れゆく天然ダイヤの「永遠の輝き」 人工ダイヤが急速にシェア拡大
富の象徴としてのダイヤモンドの地位が加速度的に衰退している。人工的に生成された低価格のラボグロウンダイヤモンドが市場シェアを拡大する中、鉱山から採掘された天然ダイヤの価値が下がっているためだ。 昔ながらのダイヤモンド・宝飾品産業にとって頭の痛い状況であるだけでなく、最新の財務分析では、高価値・少量生産のビジネスから低価値・大量生産ビジネスへの移行によって引き起こされる課題が浮き彫りになっている。 投資銀行のモルガン・スタンレーによると、ラボグロウンダイヤが2023年のダイヤモンド総供給量に占める割合は14.3%、計1600万カラットに上った。これに対し、新たに採掘された天然ダイヤは1億1200万カラットと圧倒的に多い。 ただし、この数字が興味深い点は、ラボグロウンダイヤの供給量が大幅に増加する一方で、天然ダイヤの供給量は横ばいか減少しているという全体的な傾向にある。 モルガン・スタンレーが9月に発表した需給モデルでは、ダイヤモンド市場全体に占めるラボグロウンダイヤの割合は今年18%に上昇し、来年にはさらに増加して21.3%(計1億1800万カラット中、2510万カラット) になると予想されている。 工業製品一般の例にもれず、ラボグロウンダイヤの大部分は中国産だ。モルガン・スタンレーによれば中国産は2023年に供給量の9.3%を占め、今年は12.7%に増加する見込み。第2位はインドで、今年2.9%を占めるとみられる。 ■急速に成長するラボグロウン市場 ラボグロウンダイヤ市場の拡大ペースの速さは、2020年のシェアが7.5%(計1億700万カラット中、800万カラット)だった事実をみればよくわかる。 「ラボグロウンダイヤのシェア拡大傾向は依然として揺るぎなく、天然ダイヤ市場が直面している構造的な課題に拍車をかけている」とモルガン・スタンレーは指摘している。 対照的に、天然ダイヤの供給量は減少傾向にあり、2017年の1億5100万カラットをピークに、2020年には1億700万カラットまで落ち込んだ。その後は徐々に回復しているものの、今年は1億1200万カラットにとどまる見通しだ。