「孤独死が発生しています」憧れだったマンション群でまさかの掲示 都心の一等地なのに超高齢社会…日本の未来の縮図で起きた悲しい現実
「一切関わりたくない」 女友だちの共通の友人からは、プロ野球でピッチャーをしていた自慢の息子がいたこと、離婚したこと、その後は独り暮らしだったことを知らされた。彼女が生きている間に身の上話をしたことはなかった。 「長く生きていると、いろんな事があるから」 せめて手を合わせたいと思い、葬儀や墓の場所を大家に尋ねたが「個人情報だから」と教えてもらえなかった。亡くなった後のカラオケ会では、彼女の「おはこ」をみんなで合唱して弔った。参加者はみんな泣いていたという。 「独りで暮らすってこういうことなんだ。明日はわが身だわって思ったの」。遠藤さんは瞳に涙をためながら語った。 ▽「遺影は10年前に撮ってある」 「悲しい話ですが、団地内で孤独死が発生しています」。遠藤さんが暮らすマンション1階の掲示板には、いつの間にかこんな案内文が貼られていた。「どきっとした」。独居している隣人の顔が浮かんだ。友人や知人を孤独死させたくない。定期的に電話をかけ、郵便物がたまっていないかどうか注意しているが、1人でやれることには限界がある。
一昔前なら、新聞受けに新聞がたまっていると「おかしい」と気づくことができた。でも今は、異変が見えづらくなっているという。「孤立したら駄目。つながりがないと」。せめてカラオケ会は、誰もが来られる場所にしたいと考えている。 遠藤さんはふと漏らした。「私もぽっくりと死ぬ気がするの」。遺影用の写真は既に10年も前に撮り、居間のテレビの横に用意してある。もしものとき、娘に迷惑をかけないためだ。 写真立てに収まった10年前の自分は、今も穏やかな表情を浮かべている。「前髪をもう少し整えれば良かったかな。こんなもの用意して、おかしいでしょ?」 娘にはこんな風に言われたという。「90歳まで生きたとして、20年前の写真が遺影だったら若すぎておかしいでしょうが」 遠藤さんは、娘に今度そう言われたらこう返そうと思っている。 「今の方が若く見えるんだから、撮り直したらもっと若返っちゃうよ」