「孤独死が発生しています」憧れだったマンション群でまさかの掲示 都心の一等地なのに超高齢社会…日本の未来の縮図で起きた悲しい現実
介護されている男性には「けがなどで動けなくなったらもうできませんからね」と伝えてはある。それまではもうしばらく続けるつもりだ。 ▽近所の人が集うカラオケ会 勤務がない日もじっとはしていない。楽しみは近所の人々が集う月1回のカラオケ会。主催者も遠藤さん。場所は戸山ハイツの近くにある。スナック風のカラオケ店を貸し切りにする。 カラオケ会の前日には20食以上の手料理を仕込み、みんなに振る舞う。赤飯、里芋の煮物、おしんこ、南蛮漬け、魚のフライ―。そうめんのつゆも手作りだ。味が染みこんだ煮物は特に評判で、食事を楽しみに足を運ぶ人も多いという。 手料理は会が始まる前に、車輪付きのカートで運ぶ。参加者の中には電動車いすで来る人もいる。店が地下にあるため、足腰がまだ元気なメンバー2、3人が介抱し、階段をゆっくりと降ろしてやる。 常連の1人は笑いながら話した。「ここに来られなくなったらおしまいだわ」
参加者は最年長がもうすぐ90歳。最年少でも65歳。半数以上は戸山ハイツの住民という。遠藤さんはカラオケ会の最中もほとんど座らず、気配りを欠かさない。みんなのグラスが空いていないか気に留め、マイクが回ってこない人がいればデュエットに誘う。カラオケ会は毎回盛り上がり、帰宅が午前0時を過ぎることも少なくない。 ▽ある日突然、カラオケに来なくなった友人 仕事と遊びでハリのある毎日だが、高齢者ばかりだけに死と向き合うことも少なくない。 昨年9月、残暑が厳しい中でカラオケ会が開かれたが、近くのアパートに住む70代の女友だちが姿を見せなかった。遠藤さんは何度も電話をかけたが、自動音声が流れるだけ。胸騒ぎがした。 アパートの大家に事情を話し、鍵を開けてもらってこの友人の部屋に入ると、冷房が効いた部屋の布団の上で手を天井に向けて伸ばしたまま、目を見開いて亡くなっていた。孤独死だった。 発見者として警察の事情聴取を終えて自室に戻ると、張り詰めた気持ちが緩んだせいか、涙があふれ出た。ただ、悲しい現実を知ったのはその後のこと。大家によると、遺体や遺品の引き取りについて親族に連絡したところ、こんな返答だった。