岡谷鋼機（社長・岡谷健広氏）は、AI技術を活用した帯鋸（バンドソー）刃の異音検知システムを開発した。バンドソーのブレード（刃）にヒビが入るなどして設備に接触する際に発生する異音データを収集しAI解析できるアルゴリズムを構築。ブレード破断前に自動検知・警告を行うことでブレードの最適な交換時期を可視化する。高額なブレードの有効利用、ブレード交換時間や鋼材廃棄ロスの削減などが可能となる。 　バンドソーは、切断する鋼材や使用頻度などによってブレードの交換時期が大きく異なる。特に合金の工具鋼や金型鋼、ステンレス鋼など難加工材では10万円以上する超硬ブレードの使用やブレードの再研磨、交換などで年間数百万円のランニングコストがかかるケースもある。ただ現在は、累計切断面積や熟練作業者の聴覚による〝勘〟に頼る交換時期の判断が一般的。ブレードの寿命のばらつきに気付かずに破断、切断中の鋼材廃棄、設備そのものの損傷リスクなどが課題となっている。 　岡谷鋼機では、現中期経営5カ年計画がスタートした2021年に同社エレクトロニクス本部が「岡谷鋼機の特徴を活かした製造現場の改善」をテーマに新規事業を検討。特殊鋼本部と協業し、鋼材・特殊鋼流通にヒアリングした際にニーズとして挙がったのが「ハンドソーのブレード交換タイミングの可視化」だった。 　業務提携先でAI内製化支援を行うXAI（ザイ、本社・東京都渋谷区、八木谷佑太CEO）の協力のもと、取引先特殊鋼流通のグリーンスチール（愛知県小牧市）工場内でバンドソーから出る異音データを21年夏に4カ月間収集してアルゴリズムを構築。ブレード再研磨メーカーのアドバイスを受けながら、ブレードにヒビが入って設備と接触する際に発生する微小音をAIで解析して検知するシステムを開発した。 　第一段階のアルゴリズム構築が終わっており、今年の第1四半期で追加学習やバグの修正を行い今夏までにリリースする予定。設備自体は異音を検知する収音マイクとタブレット・PCなどの端末のみ。中小企業も導入しやすいように月額数万円程度のサービス提供契約形態での市場投入を予定している。 　バンドソーを持つ鋼材流通加工業のほか、硬いカーボン材など難加工材の切断を手掛ける加工業もターゲットにする。また、岡谷鋼機は複数のブレード再研磨メーカーと取引があり「AI技術を使った中小企業のモノづくり支援」との観点から、ブレード再研磨サービスを加えたシステムリースの営業展開なども検討していく方針だ。 　同システムに関する問合せは岡谷鋼機・エレクトロニクス本部／赤堀（mail：akahoriy＠okaya．co．jp）まで。