間宮祥太朗「経験を積むことで、逆に何か大切なものを忘れてしまうこともあるかも」
── 間宮さんが感じる舞台と映像作品の違いや魅力を教えてください。 間宮 どちらも体力や精神力を使いますが、舞台の方が稽古期間も含めて健康的な生活を送れますね(笑)。映像作品は場所もさまざまですし、時間帯も不規則に進行しますが、舞台は朝5時集合ということはまずありません。開始と終了時間もある程度同じ時間帯なのでルーティン化されているんです。公演が続いてちょっと大変だな……という時もあるけれど、疲弊とともに一種の爽快感が味うことができます。運動してシャワーに入る感覚と近しい感じとも言えますね(笑)。 ── 舞台はナマモノ。台詞が飛ぶことやアドリブの対応が必要な場合もあると思いますが、それは苦ではない? 間宮 台詞を飛ばしたこともありますが、アクシデントがあってもあまり慌てたことはありません。自分自身では覚えていないけれど(笑)、自然と流れに合わせているのかなと。緊張感をもちつつも、そんなハプニングも楽しいと思えるくらいの、いい意味でのラフさが自分にはあるのかなと思います。 ── ほかにも舞台の魅力はありますか? 間宮 張り詰めている空気感が独特だな、と感じますね。舞台で芝居をしている僕たちはマイナーチェンジがありつつも毎日同じ演出で演じていますが、お客様はこの公演だけという方がほとんどです。それだけの対価を払っているわけですし、ワクワクしている気持ちが伝わってくるので、その緊張感はもちろんあります。
芝居中にコントロールが外れ、朦朧とする瞬間を感じる
── 今回の『台風23号』の作・演出をされる赤堀雅秋さんについては、舞台と映画版の両方を観た『葛城事件』が初体験とのことでしたが、その時の印象を教えてください。 間宮 舞台を観終わった後に映画版を鑑賞しました。小劇場「ザ・スズナリ」での公演で舞台がすごく近かったこともあり、汗が飛んでくるぐらいの距離感だったんです。出演役者の熱を浴びて、一気に世界にひきこまれました。 ── 待望の赤堀作品に初参加とのことで、期待していることはありますか? 事前準備などをされていたら教えてください。 間宮 友人の仲野太賀が赤堀作品に出演していますが、詳しくは聞いていません。一番期待していることは、やっぱり脚本ですね。どういう台詞が書かれているんだろうかとワクワクしています。 ── 赤堀作品への出演で「コントロールから外れるような体験ができるのではないかと予感している」とコメントがありますが、それは一体どのような状態なのでしょう? 今までにそんな経験をされたことはありますか? 間宮 あります。でも、どう言語化したらいいのか難しいですね……。大体の演技は思考からはじまり、それを伝達して、動いたり発したりします。でも、コントロールが外れると、その思考を通らずいきなり動くんです。この演技がお客さんや監督、演出家のみなさんからすると正解かどうかは分からないけれど、自動的に動きだしている瞬間があるんです。 ── そういうのがあるから「やっぱり俳優は辞められない」と思うのでしょうか? 間宮 そうです、面白いですよね。その瞬間はちょっと朦朧としているみたいな。赤堀さんの作品にはまだ出ていないけれど、観客として見ていて、そんな体験ができそうな印象を受けました。