もしもあなたが「がんです」と言われたら、探すべき病院は「近くて普通」「遠くて最高」どっち?知っておきたい「がん治療のための理想の病院」
すい臓がんなど見つかりにくいがんにり患する芸能人のニュースが相次ぎました。 がんの告知とはかつては死の告知でしたが、医療技術の発展とともに「並存する病」の1つへと変化しています。それでも、部位とステージによってはまだまだ、余命宣告に近いケースもあります。 「オックスフォード大留学時にセカンドオピニオンの存在を知り、1998年に帰国、その後、勤務先の大学病院で日本ではじめてのセカンドオピニオン外来を開設しました。ぼくは外科学、免疫学、漢方と3つの専門分野を持っていますが、根底にあるのはすべて『がんとの闘い』でした」 そう語るのは新見正則医院・院長の新見正則先生。 「コロナ禍に独立し、がんのセカンドオピニオンも行うクリニックを設立しましたが、最も質問されるのが『病院選び』です。ならば、先にぼくが知るすべてを書いておこうと、40年以上の医業の集大成として『がん治療病院の選び方』『がんの標準治療は並』『私が描く新しいがん治療』の三部構成で、書籍1冊分の内容を書き上げました。ブログで無料で公開しています」 その内容について伺いました。
結論から言うと、「すべてを満たすがん治療病院は日本には存在していない」
セカンドオピニオン外来で間違いなく全員が質問するのが「私はどの病院に行けばいいのでしょう」なのだと新見先生。 「ぼくは外科医でキャリアをスタートして、免疫学、漢方のキャリアを重ねつつ、現在は消化器外科専門医・指導医として漢方の知識を加え勤務キャリアを過ごしています。約40年の多くの時間をがんと向き合ってきた経験から、自分なりの選定基準を書きました。しかし、7万字を要約して言うと『すべてを満たすがん治療病院はない』です(笑)」 たとえば、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)はほぼ理想的であるものの、陽子線治療は可能でも重粒子線の装置がないと指摘します。これらがんの診療施設には歴然と地域格差があり、全国のほとんどの地域では「そもそも近隣に施設がない」そうです。 「昨今がん治療でよく言われる『標準治療が最善の治療である』という言説も、ぼくの立場からするとニュアンスが若干違います。確かに、標準治療は保険診療の中でいちばんよい、つまりいちばん『多くの人』を救うものです、保険診療ですから費用負担が極めて低額です。それは間違いありません」 ただし、最近の医療はとんでもない速度で進歩している、この点が重要です、と続けます。 「いまが一番いいなら何であれその瞬間に時が止まり、もうそれ以上進歩しません。一番いいわけではないから進歩していくんです。標準治療は金銭的負荷も考慮したうえでは、今ある最良の治療です。金銭的負荷を外し、近い将来まで視野を広げれば、もっとよい治療が存在します。標準治療とは常に『最多数にとっての最善解』つまり『並み』です。この点を踏まえずに、常に標準治療が最高の治療だという伝え方をするなら、それは正しくないのではと思います」