知らなきゃヤバい「シェブロン法理の無効化」とは? 日本の金融機関も重大影響の中身
日本への余波は?「金融業への影響」まとめ
さて、シェブロン法理が否定されたことで、銀行の自己資本比率規制やマネーローンダリング防止対策などで、日本にも余波が及ぶ可能性がある(図3)。 前述のように当面は現行の施行規則が従来通り効力を維持する。しかし当局が新たな施行規則を発令した場合、「現場の実情に即していない」として金融機関から訴訟を起こされる可能性がある。 そのような訴えが、大統領に指名された連邦地方裁判所や連邦巡回控訴裁判所のリベラル派判事によって退けられても、保守派判事が多数を占める連邦最高裁において認められて、結果として銀行のコンプライアンス負担が軽減されることを予想する向きもある。 米国における規制強化のたびに新たな対応を迫られていた日本の金融機関も負担が軽減されるだろう。さらに、ジェンダーや人種に関する社会正義を盛り込んだ規制についても、米国で基準が緩和されることで日本の事業者による対応もよりビジネス効率を重視したものへと変わってゆく可能性がある。 また、消費者金融保護局(CFPB)が3月に発令した、クレジットカードの返済遅延金を月額最大8ドル(約1,290円)に制限する施行規則についても、制定法(行政手続法)に明確な定めのない規制は無効だとの判断が下る可能性も指摘される。現在、米国銀行協会(ABA)が訴訟を起こし、争われているが、無効となれば銀行経営の自由度を拡大し、利益増大に貢献すると考えられる。 与信審査やその慣行においては、CFPBがジェンダーや人種、性的嗜好に対する差別を禁ずる施行規則を発出しているが、シェブロン法理の否定により、「根拠法はCFPBにそのような権限を与えていない」と裁判所が判断すれば、銀行はより利潤を追求したローンの貸し付けを行えるようになる。 さらに中小企業向け融資に関する規制でも、法律に定めのある「中小企業」の定義の範囲をめぐって裁判で争われ、CFPBといった規制当局の監督権限が結果的に狭まるかもしれない。