【めぐりあい宇宙編の“安彦ガンダム”を追求】旧キットガンプラを使用し“80年代のデザイン”を追いかけた理由とは
“推し活”を応援するトレンドメディア「Fandomplus」では、編集部が衝撃を受けた“推しプラ”を連載で紹介。本稿では、クラシカルなデザインの60分の1スケールガンダムを製作し、SNSに投稿しているモデラー・ヲパさん(@GunGunpla)にインタビューを実施。製作にいたる経緯や、製作過程で最も苦労したポイント、この作品を通じて学んだことなどを振り返ってもらった。 【ガンプラ写真】塗装で色味にもこだわった、1/60スケールのガンダムとゲルググ ■安彦良和さんの原画を参考に、二次元から三次元への置き換えを一から勉強 ――こちらのガンプラ作品を製作するにあたり、どのようなアイデアやインスピレーションがありましたか? バンダイさんからさまざまなフォーマットでラインナップされているガンダムですが、現代風のアレンジが施されたものが多く、私が当時映画館で観た「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」で受けた印象とは違って見えるものが多くなりました。そこで一度、真正面から当時のガンダムと向き合ってみようと思ったのが製作のきっかけです。その際、ディテールがシンプルであり、当時のアニメの印象に近いキットということで選んだのが、こちらの60分の1スケールの旧キット「ガンダム」でした。 ――製作過程でもっとも難しかった部分は何でしたか? 圧倒的に難しかったのは“顔”です。一度完成させたのですが、出来栄えに納得がいかず、予備のキットを使って作り直しました。ガンダムの顔って、設定画や劇中の作画など、参考にする資料によって雰囲気が全然違うんですよ。なので安彦良和さんが原画で描かれたものを参考に、各部のデザインやレイアウトを一つひとつ盛り削りして、こちらの形に仕上げました。 そこで気づいたのが、絵は微妙にパースが付いていて、必ずしも見たままで再現することが立体の正解ではないということ。絵がこうだったからとそのままを立体にすると、それ以外の角度で見るとデザインが破綻してしまうということ。つまり、二次元から三次元への置き換えには、それを読み取る力が必要というわけです。 メインカメラのトサカ、ヒサシのボリューム、ツインアイの形状、クマドリの面積、マスクのスリット、アーチ、あごの赤い部分のボリューム。これらが絶妙なバランスであることが、安彦良和さんのガンダムを“最も理想的なガンダム”たらしめている理由なのだということがわかって。それに加えてXで、アニメ関係者の方々からもいろいろとアドバイスをいただけたおかげで、この形にたどり着けた……という感覚です。 ――では、本作を製作する過程で楽しかった部分は? 内部フレームのない旧キットなので、思うように切ったり貼ったりがしやすくて。自分のイメージをダイレクトに投影できたのは楽しかったですね。先に作った同スケールのゲルググは筆塗りで塗装を行ったので、ガンダムも同様の形で塗装して。色味に統一感を持たせて、2体並べて飾れるようにしたのも、楽しみつつこだわったポイントになります。 ――本作で特に気に入っているポイントを教えてください。 少ない線で表現したフォルムでしょうか。スジボリやデカールも一切使わず、劇中のフォルムだけを追求した結果、同世代のモデラー諸氏のみならず、アニメ関係者の方々からも好意的な意見をいただくことができました。 ――製作を通じて、新しい発見や学びがありましたか? 完成した記念で応募した「月刊ホビージャパン」のガンプラコンテスト「第23回全日本オラザク選手権」において、ガンプラ部門の金賞に選んでいただきました。 40年以上続くガンプラというコンテンツは、もうひと括りにカテゴライズできないくらい、膨大なラインナップになっています。それでもなお、このシンプルなフォルムに「イイね」といってくれる層がまだまだ大勢いらっしゃることは励みになりますし、自信にもつながりました。さらにはこちらの作品がきっかけで、フィギュアや彩色のお仕事にもつながるなど、新たな世界への挑戦の機会がどんどん舞い込んできて。自分で作った作品ではありますが、感謝しかありません! (C)創通・サンライズ 取材・文=ソムタム田井