167cmの桂川有人はなぜ飛ぶ? 目澤秀憲コーチが明かすスイング改造の舞台裏
トレーニングで効果を促進
もちろん意識を変えるだけでは、スイングを変化させることは難しい。そこにトレーニングを加え、体に刺激を与えた。「昨年アメリカで戦っているときは、なかなかトレーニングができなかったと聞きます。腰痛も抱え、スイングにも影響が出ていた。ことしはオフにしっかりとウエイトトレーニングを積むことができ、体に明らかな変化が出ました」 1月に稲葉弘泰トレーナーと目澤氏の3人でタイ合宿を行い、スイングと体の擦り合わせを図った。目澤氏がやらせたいスイングに対して、稲葉トレーナーが動ける体を作る。2月に再びトレーニング合宿を行うなど、着実に体を仕上げていった。 その効果は4月初旬、再びギアーズで測った時に表れていたという。「年末の時とまるで別人でした。教科書通りのスイングで、軸はずっとセンターをキープ。どちらにも体が倒れずに打てていました。骨盤も今まではボールに近づく動きが大きかったんですが、かなり減って前に出ない」と大幅に改善。ヘッドスピードは2~3m/s上がり(約53m/s)、ボールスピードも75m/sを下回らなくなった。それだけスピードが変われば、当然飛距離は伸びる。
三位一体の改造
さらに目澤氏は、背景にあるクラブフィッティングの効果を強調した。「プロに入ってからアップライトなクラブでやっていたようで。今回ギアーズで測ったところ、結構トウアップで当たっていました。身長が高くはないし、手元も低いところで当たりやすいので、クラブはもう少しフラット目がいいのでは、という話をしました」。ツアーレップ(用具担当)とも話し、アイアンを標準から2度ほどフラットに。「そのポジションなら力を発揮しやすいですし、ドローも打ちやすい。アイアンのシャフトも元々好きだったモーダスに戻して、ヒールに当たるミスも減りました」
スイング、体、ギア、まさに三位一体の改造で小柄な飛ばし屋に進化。そして改造からわずか4カ月で、欧州ツアーという世界の舞台で最高の結果を残した。「いろいろ変えたのはありますが、一番大きいのは実際に本人の振っている感覚と球やスイングのデータが揃っていること。そうすると緊張した場面でも振っていけますからね。感覚が合っていれば怖がらずにスピードも出せるはずです」。一度は夢破れた海外挑戦。一流のコーチ、トレーナーとタッグを組んで仕切り直し、桂川は自らの手で世界に挑む機会を再びつかんだ。(編集部/服部謙二郎)