【韓国政情不安で高まる東アジアの脅威】後退させてはいけない日米韓同盟、日本は「国連軍地位協定」の役割を知らせよ
覚醒した国連軍と地位協定
きっかけとなったのは、2000年代以降、北朝鮮が国連安保理決議に違反して核実験やミサイル発射を繰り返したことだった。 安保理は2017年までに11本の北朝鮮制裁決議を採択し、北朝鮮産の石炭を全面禁輸にしたのに続き、北朝鮮が輸入できる原油の量にも上限を課している。だが北朝鮮は、決議を無視する第三国の小型タンカーから海上で原油を受け取ったり、石炭を積み替えたりするいわゆる「瀬取り」と呼ばれる違法活動を行っていることが、米国が国連に提出した報告書で明らかになった。 このため安保理は同年9月、全ての国連加盟国に対し、北朝鮮等による違法な瀬取りの監視を要請、それを受けて米国は同年11月、当時のティラーソン国務長官の名前で「米国はカナダと連携して朝鮮国連軍派遣国との会合を開催し、(中略)北朝鮮が国際平和に与える影響に国際社会がいかに対抗できるかを協議する」との談話を発表した。 その4カ月後の18年4月、外務省は「瀬取りを含む違法な海上活動に対する関係国による警戒監視活動」を公表し、米国に加え関係国が在日米軍嘉手納基地(沖縄)を拠点に、航空機による警戒監視活動を行うことになったと説明。活動と基地使用の根拠として「国連軍地位協定」を挙げ、政府として取り組みを歓迎するとした。
瀬取りの監視と航行の自由作戦
その後、瀬取りに対する警戒監視活動には各国海軍等の艦艇も加わり、同省のホームページによると、24年11月末までに公表した監視活動は80回以上に及んでいる。 航空機による監視活動には日米のほかに豪州、カナダ、ニュージーランド、フランスが参加し、艦艇による監視にも日米のほか英国、豪州、カナダ、フランス、オランダが名を連ねている。日本を除けば、いずれも朝鮮国連軍の参加国で、航空機は国連軍地位協定で使用が認められている嘉手納基地を拠点に活動し、艦艇は同協定で使用できる在日米軍の横須賀と佐世保の海軍施設に寄港しながら活動を続けている。 これらの活動は米インド太平洋軍隷下で、横須賀を母港とする米第7艦隊旗艦「ブルーリッジ」の調整所でコントロールされているとされ、各国の艦艇は瀬取り監視のために東シナ海と南シナ海を行き来する際、「航行の自由作戦」として台湾海峡も通航している。 瀬取り監視と航行の自由作戦――。同協定を根拠とした多国間の行動こそが、北朝鮮だけでなく、国際法を無視して南シナ海と東シナ海を自国の管轄権がおよぶ海域と主張し、周辺国を軍事的に威圧する中国の独善的な行動を抑止する枠組みにほかならない。