住宅ローン市場に三菱UFJショック 最優遇金利0.345%で業界最低に
住宅ローン利用者にとって、低い金利は大きな魅力だ。住宅金融支援機構が2023年10月~24年3月までに住宅ローンを借りた人を対象に行ったアンケート調査では、回答者の75%以上が金利の低さで決めたと答えた。「人生最大の買い物」とされる住宅購入のコストを左右する金利は、顧客争奪戦で勝つ上で最も重要な要素であることは間違いない。 ●利上げ局面で腹の探り合いに MFSの塩澤氏が指摘したように、三菱UFJ銀の最優遇金利は、近年メガバンク以上に住宅ローンに力を入れてきたネット系よりも低い。10月の金利を比較すると、有力ネット系で最も低かったのはSBI新生銀行の0.42%。三菱UFJ銀との差は0.075%だ。 仮に3000万円を35年間、元利均等・ボーナス時加算なしという条件で借りると、三菱UFJ銀なら月々の返済額が約7万5800円。SBI新生銀なら同じ条件で約7万6800円と、毎月1000円の差が生じる。 SBI新生銀は現在、基準金利の引き上げも含めて11月に向けた方針を検討中。銀行業界の中で相対的に低い金利水準を維持したい考えで、三菱UFJ銀の今後の出方を探りながらの判断を迫られる。 10月の三菱UFJ銀の動きを踏まえ、11月に向けてSBI新生銀以外の大手行やネット系についても、それぞれどう動くのか腹の探り合いとなりそうだ。ネット系に比べて多様な収益源を抱える大手銀は、住宅ローンの利ざやが小さくても、それを起点に取引を資産運用などに広げれば、収益を確保できるという考えも成り立つ。 住宅ローン市場ではネット銀が台頭し、3メガバンクグループの貸出残高は減少傾向が続いてきた。金融環境の変化を受けて、メガバンクからネット系へ借り手がシフトするトレンドにも変化が起きる可能性がある。 ネット系の中には新たな集客策を打ち出す動きも出ている。auじぶん銀は10月、預金残高の増加額に応じて25年1月から3年間、住宅ローンの利息の一部を現金で毎月キャッシュバックするサービスを導入する。24年12月末までにローンを申し込んだ人が対象だ。 住信SBIネット銀行やPayPay銀行は一定割合以上の頭金を用意した借り手について金利の優遇幅を大きくする。ソニー銀行は環境配慮型住宅を対象とするローンの金利を引き下げる。 ネット系の間では、ローンに付帯する団体信用生命保険(団信)を充実させてメガバンクに対抗する動きもある。MFSの塩澤氏は「住宅ローンのハイシーズンである1~2月に向けて、ネット銀行もさらに何か仕掛けてくるだろう」と見る。
馬塲 貴子