住宅ローン市場に三菱UFJショック 最優遇金利0.345%で業界最低に
「三菱UFJ銀行の住宅ローンの変動金利はもともと低水準だったが、低いまま維持するとは想定外だった」(あるインターネット系銀行の融資担当者) 【関連画像】主な銀行の変動型住宅ローン金利(10/1時点) メガバンクの三菱UFJ銀が10月に打ち出した住宅ローンの低金利戦略が、金融業界に波紋を広げている。他のメガバンクやネット系銀行が相次いで変動型住宅ローンの最優遇金利を引き上げる中、三菱UFJ銀は年0.345%に据え置いたのだ。 「10月の変動金利は、主要ネット銀行の平均金利がメガバンクの平均を上回る『逆転現象』が起きた」(住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSの塩澤崇取締役)。ネット銀を軸に競争が繰り広げられてきた住宅ローン市場に三菱UFJ銀が一石を投じた。 19日には、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)がKDDIと共同出資する金融会社に対する出資を見直し、その一環でauじぶん銀行への出資(発行済み株式の22%)をKDDIに売却する方針であることが一部報道で明らかになった。正式決定されれば、思い切った低金利戦略と合わせて、MUFGが三菱UFJ銀を主軸に住宅ローンを含む個人向け融資で攻勢に出ることが鮮明になる。 ●基準金利の引き上げを実質相殺 最優遇金利とは、新規の住宅ローンの借り入れに適用される金利の目安となる。短期プライムレート(短プラ)などをベースとする「基準金利」から、一定の優遇幅を差し引いたものだ。 三菱UFJ銀は基準金利に関しては10月から0.15%引き上げ、2.625%とした。三井住友銀行やりそな銀行など他の大手行と足並みをそろえた格好になった。みずほ銀行は新規借り入れの基準金利を2.475%に据え置いた。新規分の比較では大手行でみずほ銀の金利が最も低い。 だが、基準金利の引き上げと同時に、三菱UFJ銀は基準金利から引く優遇幅を0.15%拡大。これで基準金利の引き上げを実質的に相殺し、最優遇金利を9月と同じ0.345%にとどめた。この措置によって、新規顧客向けでは自行よりも基準金利が低いみずほ銀をも最優遇金利で下回り、大手行の中で最も低くした。 三菱UFJ銀の低金利戦略は、冒頭のネット系担当者らの驚きを誘っただけでなく、日本銀行による金融政策の転換以来、ローン金利の動きに敏感になっている借り手も呼び込んだようだ。三菱UFJ銀の住宅ローン融資担当者は、10月は前の月に比べて新規、既存(他の金融機関からの借り換え)ともに申し込みが増加していると明かす。