人はどんな時自分語りをしたくなるのか。人生を語る読書会が幕を開ける――直木賞候補作『よむよむかたる』ロングインタビュー
――ところで、途中で『よむよむかたる』と『だれも知らない小さな国』は、構造が似ているなと思ったのですが。 朝倉 今回は、『だれも知らない小さな国』を下敷きにしてプロットを決めていったんです。 ――やはり。エンタメ性という点では、どういう要素を入れるのか、どのようにプロットを考えていったのですか。途中で意外なことが判明して、終盤には泣かせますよね。 朝倉 まず、この話がどこで終わるか分からないとだめだろうなと。だってちゃんと物語が閉じてこそエンタメでしょう(笑)。なので、読書会の二十周年記念事業というひとつのゴールを決めました。それと、『だれも知らない小さな国』を下敷きにすると決めたからには、女の子との出会いもひとつ入れなきゃいけない。さらにもうひとひねり効かせたいなと思って、まちゃえさんの息子のことや美智留の抱える事情も入れました。 ――『だれも知らない小さな国』では、主人公が秘密の場所に小屋を建てるけれど、そこに道路拡張工事の話が持ち上がる。読書会も後半、大きな転機を迎えますね。 朝倉 そう。彼らにとって大変な危機を迎えるんですよね。それでみんなが、我に返る。つまり、こんなに楽しくやっているけれど、自分たちの先が長くないことに気づく。 連載中、編集者に「参加者たちの読みが、毎回死に繫がる話になっていきますね」って言われたのですが、これはお年寄りならではですね。やっぱり「死」はお年寄りにとって最大の関心事だと思う。 うちの母はいま八十八歳ですけれど、最近「いつ死ぬか分からないから、ティッシュは五個しか買わない」って言いだしてびっくりしたの(笑)。以前はいっぱいストックしていたのに、そんなことを言うんだ、って。 ―― 一方、安田も少しずつ変わっていきます。彼がスランプになったのは、読者から盗作を疑うような手紙が届いたのがきっかけです。彼にはまったく心当たりがないのに。 朝倉 安田くんの気持ちはよく分かるんですよ。「パクりましたよね」と言われたら、なにを書いてもパクっている気がして、なにも書けなくなる。だって、他の人は分からないけれど、自分は自分の小説がどこからどう生まれたか分からないんです。夢みたいなものが浮かんで、書いているうちに正夢になっていく感覚で、ゼロから作っている気がしない。他の何かの影響を受けたのかもしれないから、「盗作だ」と言われたら、「そうかもしれない」と思っちゃいそう。 だから、私にもしそういう疑惑があがったとしても、やろうと思ってやっているんじゃないよってことは分かってほしいです(笑)。 ――安田くんはそうして書けなくなったけれど、読書会への参加は彼にとって大切な経験となりますね。 朝倉 スランプとかイップスの時って、構えすぎて、こねくりまわしちゃうんですよ。いっぱいいっぱいで、怖くて、一歩が出なくなる。とにかく思ったことや感じたことが、すっと出てこなくなっているんですね。 そういう時に、読書会のみんなが思っていることを素直に言っている様子に触れたのは大きかったと思いますね。