日本で電気自動車が普及しない理由 乗り遅れたのか、それとも… 英国人記者が考えてみた
効率的な小型車を選ぶ日本
欧州では、クルマからの排出量に基づいてEVを支持する法律が制定されている。これが解決策であると同時に目標でもあるというガイトン氏の見解は、欧州の立法者を声高に批判するステランティスのCEO、カルロス・タバレス氏の見解と重なる。タバレス氏は、2022年にフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会食した後、立法者が「独断的で世間知らず」であることを知ったという。自動車業界にカーボンニュートラル目標を設定するだけではなく、そこに到達するために必要な手段、つまりクルマのゼロ・エミッションを設定したのである。 日本では電動車を支持する法律は存在せず、EVの普及は非常に遅れており、販売台数ではインドが大きく上回っている。日本は、日産リーフという世界初の量産型EVを生み出した国であるにもかかわらず、国内の消費者はEVを敬遠し、ハイブリッド車や軽自動車など、より効率的なクルマに目を向けてきた。欧州では、EVを含むさまざまな法規制が業界を圧迫しており、自動車メーカーにとって生産コストが不経済であるため、シティカー(超小型車)は事実上消滅している。 他の国では、EVが避けられない主流となりつつある。中国は自国向けと輸出向けのEVを産業戦略の重要な一部とし、米国でさえインフレ削減法の一環としてEVの生産と普及を促進するために膨大な補助金を用意している。 日産は2010年にリーフを初めて市場投入したが、2番目のEVであるアリアを発売したのは2022年だった。日本の自動車メーカーが複数のEVモデルを生産し始めたのは、日産、ホンダ、トヨタなどの世界的展開があるからに他ならず、日本国外での市場の変化に対応するためである。 調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズのグローバル自動車予測担当副社長、サム・フィオラニ氏は言う。「従来、トヨタ、ホンダ、日産が小型車、小型トラック、SUV、ハイブリッド車といった新分野への参入をリードしてきました」 「プラグインハイブリッドを含むハイブリッド車で、排出ガスの改善に向けた取り組みの大部分を満たせると考え、最新のEV開発に必要な投資を遅らせていたのです。EVへの移行は、排出ガス対策が主な理由でしたが、巨大な中国市場へのアピールの必要性も背景にあります」