「ここまで明かすのか」正直すぎるシャンプー/家業を継いで気づいた、ダサい町工場を背負った父の信念 ~木村石鹸工業 後編
◆職人の「釜焚き」は非効率だが、大企業にない面白さと魅力がある
――次の代への事業承継はどのようにお考えですか? 子供がいないので、親族承継は僕が最後です。外部の人間がトップに立っても会社として継続していける仕組みを作る。 それがこの10年の課題ですね。ただ、すごく難しい。 効率や経営の視点だけで考えると、やめた方がいいことは山ほどあります。 石鹸の製造方法にしても、うちは職人が鍋に張り付いてぐつぐつ煮る「釜焚き」ですが、正直儲からないし非効率な製法です。 しかし非合理的な部分を全てそぎ落としてシステム化すると、木村石鹸の面白さや魅力はなくなってしまう。 大手企業ではないがゆえの葛藤ですね。 そこを理解した上での事業承継のスキームについて、非常に頭を悩ませています。 大手の資本に入った方がいいのかも含め、どういうやり方があるだろうかと。 できれば社内から、トップに立つ人間が育ってくれたらと思っています。 ――そのための育成プログラムもあるのでしょうか? 今年から「ジュニア経営メンバー」という、次世代を担う若手から中堅だけのジュニアボードを作りました。 今の経営メンバーとはまた別で、新しい木村石鹸をやっていくメンバーです。 まだまだこれからの取り組みで、まずは経営会議をやろうと思っています。 例えば10年後の姿を考えて中長期の事業計画を作ってみるなどですね。 ――現在は20代の社員が一番多いそうですね。 僕が家業に戻った時、社員の平均年齢は45歳前後でした。 今は10歳若返って36歳です。 役員を除くと10代~20代が一番多くて、30代まで入れると全体の40%近い。 自社ブランドの盛り上がりとSNSの活用によって、木村石鹸の門を叩いてくれる若人が劇的に増えました。 とにかく若手にチャンスを与えて、バッターボックスに立てる環境を作り続けたい。 ベテラン陣はそれを支えてサポートする。 僕自身、社会経験もない無知な大学生だったのに起業してどうにかやれたのは、周りの支えがあったからです。 今の若い人たちはもっと頭がいいし、インターネットを通じて情報も大量に手に入る。 僕らよりもずっとすごいことができるだろうと期待しています。