「ここまで明かすのか」正直すぎるシャンプー/家業を継いで気づいた、ダサい町工場を背負った父の信念 ~木村石鹸工業 後編
◆こんなことまで書くメーカーあるのか
――予想外の大反響だったと。 驚きました。「正直に伝える」姿勢がこんなにうけるとは思わなかった。 自分たちが当たり前にやっていることに対して、感動や共感をしてくれる人がいるのだと初めて実感できたんです。 これが「木村石鹸らしさ」なんだと。 その意味でも『12/JU-NI』の存在はすごく大きかったですね。 自信をもって正直さや誠実さを発信できるようになりました。 僕らにとっては大前提のことですから、わざわざ言うのはどうなんだという思いもありましたが、大仰な広告に嫌悪感を持っている消費者が一定数いて、その層からはすごく支持されています。 「木村石鹸、正直すぎるだろう。こんなことまで書くメーカーがいるのか」と(笑)。 ――LPでも「万人向けではありません。合う人と、合わない人がいます」と明記していらっしゃいますね。 SNSで「これは広告です」と正直に開示したことも話題になりました。 いいものができたのでちょっとでも知ってもらいたい。 でも騙すようなことはしたくないという気持ちを素直に出しました。 それが逆にすごくうけて、『12/JU-NI』の売上が3倍に跳ねたんです。 正直であることがちゃんと評価されて……いやぁ、嬉しかったですね。
◆父から受け継いだ「3つのやるな」
――メイン事業をOEMから自社ブランドに切り替えるなどの変革を行ううえで、お父様と衝突する局面もありましたか? ほぼないですね。 親父は経営にノータッチで「好きにやったらいい」と言われています。 事業の方向性について話すこともほとんどありません。 ただ「これはやるな」と言われたことが5つありまして、一つは「税金をちゃんと払え」。 商売をさせてもらっているところ、例えば本社がある八尾市に対して税金を納められることを喜べと 。過度に節税するなと言われました。 次に「監視をするな」。 おそらく暗黒時代に、工場にカメラをつけて仕事をチェックするようなマネジメントがあったからだと思います。 あと「嘘をつくな」。残りの2つは忘れてしまいました(笑)。 覚えている3つは、自分でも大事にしています。 ただし税金は、社員にも還元できるようにバランスを取りつつですね。