『おむすび』ついに結と翔也が“夫婦”に 東日本大震災の前年、2人の未来は輝いていた
橋本環奈は、自他ともに認める“米田結”だった
晴れ着を着た結の聖人(北村有起哉)、愛子、歩(仲里依紗)に向けての「長い間お世話になりました」という家族への挨拶は、結と翔也が結婚式を挙げないために入れられたシーンだろう。聖人の言う通り、少々辛気臭くはあるが、聖人の涙につられて観ているこちらもグッときてしまうのは致し方ない。 その結婚式の代わりとして翔也が結を連れて向かうのが、太極軒……ではなく摩耶山の掬星台。神戸市内を一望できる屈指のビュースポットだ。翔也が結に差し出すのは箱に入ったペアリング。神戸~梅田間の節約ランニングの回想シーンはいらなかった気もするが……2人でつらいことも、悲しいことも、一緒に乗り越えてきたからこその証であることに違いはない。太陽にかざしたその指輪は、2人の未来を照らすようにキラキラと輝いている。 『おむすび』の現在の年代は、平成22年の正月。西暦にすると2010年。次週の予告で描かれているように、翌年に発生する東日本大震災を『おむすび』は描いていくことになる。それを描くべき作品なのだろう。 第14週から物語の後半に突入した『おむすび』だが、年末に放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀 橋本環奈スペシャル』(NHK総合)を、『おむすび』視聴者のどれだけの人が観ているのだろうか? 何気なく観ていた筆者はその内容に度肝を抜かれた。『おむすび』の撮影を1か月中断し、その期間で2本の映画撮影に臨んでいたこと。例の週刊誌の報道があり、『おむすび』の現場復帰初日にスタッフ陣が橋本を温かく迎え入れている様子。初めての母親役に橋本が悩みながらも結を演じていく過程が、赤裸々に映し出されていくからだ。もはやネタバレといった概念はそこにはない。その編集の姿勢は、橋本のあっけらかんとしたキャラクター(けれど人間なので悩む)にも似ているような気もする。最も印象的だったのは、米田結のキャラクター像がそのまま橋本環奈であること。麻生久美子や佐野勇斗、そして橋本自身もそのことを認めていた。すでにNHKプラスでは配信は終了してしまっているが、『おむすび』を語る上で必見のドキュメンタリーである。
渡辺彰浩