トヨタ、お前もか 「不正撲滅は無理」と主張する豊田章男会長、支持率激減で試される覚悟
日本企業は「階層」と「コンセンサス」を重視する
もう1つの要因として、無理をも飲み込んでしまう組織風土醸成に輪をかけたものが、高度経済成長を支えた「昭和企業」に共通する日本的組織文化ではないでしょうか。世界各国でMBAグローバルスクールを運営する「INSEAD」のエリン・メイヤー教授は、自著『The Culture Map』で、各国の組織活動における文化特性を分析しています。それに従い「トップダウンか合意思考(コンセンサス重視)か」「階層主義か平等主義か」の2軸で、各国の組織文化特性をマトリクスに落とし込んだものが以下の図です。 日本は極端に「階層重視かつコンセンサス重視」という位置にプロットされています。メイヤー氏はこの状態で表される日本の組織文化特性について「含みのあるコミュニケーションを好み、意思決定はコンセンサスを重要視するにもかかわらず組織のヒエラルキーが強い」と指摘しているのです。言い換えれば、組織内のムードが、階層社会の力学を背景として、無言のうちに人の行動を支配する傾向が強い、とも表現できます。
取締役の中で信任率は最低 豊田会長の覚悟が問われている
高度経済成長を支えてきたわが国の大企業は、戦後復興期に旧日本軍や官僚制にならった組織を構築し「上位下達」「本社>現場」という、至って「日本的」な序列維持を暗黙のルールとしてきました。メイヤー教授は日本の組織文化特性を「無言のうちに人の行動を支配する傾向」と表現しており、まさしく、こうした歴史に見てとれるのです。 この流れこそが、ワンマン経営者不在のサラリーマン企業においても、無言のヒエラルキーを構成し、不祥事を生む悪しき組織風土を育んでしまったといえるでしょう。自動車業界だけでなく、昭和を支えた大手製造業で検査不正などの不祥事が絶えないのは、平成を経て令和になった今も、その悪しき組織風土から脱却できない企業がいかに多いかを表しています。 無言の不正を生む悪しき組織風土の改革には、ガバナンス強化という「守り」の対策だけでなく、誰もが言いたいことを言える組織風土づくりにつながる、心理的安全性の向上という「攻め」の対策も必要になるでしょう。 豊田会長は会見で「不正の撲滅は無理だと思う」と、改革に向けて弱気とも受け取れる発言をしました。ガバナンス強化など守りの強化はできるが、根本の組織風土改革という攻めの対策はトヨタの企業文化ではできない――筆者の耳にはそう聞こえました。 日本経済を支える世界に冠たるトヨタが、不正を生み出す悪しき組織風土を放置して良いはずがありません。二酸化炭素排出量の削減対策で自動車業界が100年に一度の大変革期を迎えている中、とても組織風土改革にまで手が回らないというのなら、トヨタをはじめわが国の自動車産業は一気に「負け組」に転落しかねないでしょう。6月の株主総会における、豊田会長の再任信任率は71.93%。前年比で10ポイント以上もマイナスかつ取締役中で最低となっており、株主も会長の一連の対応を厳しい目で見ていることが分かります。 自動車産業は、わが国経済の屋台骨を支えてきた基幹産業です。その信頼が大きく揺らいでいる今、トヨタはその中核かつ日本の産業界をリードする存在であるという自覚を持って、攻めの組織風土改革にまい進して欲しいと切に願う次第です。 (大関暁夫)
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