トヨタ、お前もか 「不正撲滅は無理」と主張する豊田章男会長、支持率激減で試される覚悟
組織風土が助長した、納期のプレッシャー
日野自動車の報告書では、経営層と現場に断絶があり、経営層が不正へ直接的に関与したことや圧力がかかったことは認定できなかったとしています。そして「上位下達の気風が強すぎる」との組織特性を指摘するとともに、その組織特性の下で現場が窮屈な開発スケジュールに無言で従わざるを得ない風土が醸成され、与えられた納期目標を達成するために検査部門が不正に手を染め続けていたという事実が明らかになっているのです。 ダイハツ工業の報告書でも、酷似した指摘がなされています。同社では2000年代半ばにトヨタ出身の会長(当時)の下で開発納期の大幅な短縮を実施。その流れはトヨタの完全子会社化となった2016年以降さらに強まり、現場を圧迫したといいます。現場には「不合格となって開発、販売のスケジュールを変更するなんてことはあり得ない」という強迫観念が根付いてしまいました。そして、結果的に不正をしなければ納期目標を達成できないという流れが定着したのです。 報告書が指摘する日野自動車・ダイハツ工業の両社に共通する問題点は、組織ヒエラルキーの下で経営層や管理部門に対する現場の畏怖の念が、自発的な不正を生んだ状況。そして、上層部や管理部門と現場との断絶および、部門間の横の連携や相互コミュニケーションの不足という、現場の孤立状態でしょう。 結果として、納期のプレッシャーにさらされた現場が不正に走らざるを得なかったという道を、両社ともたどったのです。ダイハツ工業の報告書では「責められるべきは、不正を行った現場の従業員ではなく、ダイハツの経営幹部である」と経営責任を重く見て、厳しく断罪しています。
トヨタが不正に走った2つの要因
このようにトヨタ傘下のグループ企業2社における不正発生の実態を見るに、恐らく今回問題が発覚したトヨタ本体においても、同様の組織風土が不正の原因にかかわっていたであろうことは、容易に想像できるところです。筆者は、この悪しき組織風土を生み出す根底には、2つの要因があると見ています。 1つは、国内自動車業界全体にも大きな影響力を持つ、リーダー企業であるトヨタの業務管理における思いもよらぬ落とし穴です。そしてもう1つは、その管理下における日本的組織文化の付加作用ではないでしょうか。 それぞれを詳細に見ていきます。1つ目の要因として挙げたのは、カンバン方式やジャストインタイムに代表され、トヨタ生産方式とも呼ばれて世界に誇る、生産現場における効率経営です。詳細な説明は省きますが、一言で申し上げれば究極的に無駄を排した生産戦略であり、国内各社がこれに追随し効率化を競い合うことで、わが国の自動車産業を世界一に持ち上げた原動力ともなりました。 しかし、究極の生産効率化として向かうところ敵なしであったトヨタ方式が、いつしか行き過ぎの領域にまで及んでしまい、現場に対して無理強いにも近いプレッシャーをかけたのではないかと思うのです。そしてついには、利益優先を念頭に置いた効率化至上主義の下で、それに背くような弱音や拒否はタブー視されてしまった。現場は効率化目標を達成すべく、不正に手を染めていく――そんな構図が浮かび上がるのです。