自動車の「内燃機関」に未来はあるのか? 2017年クルマ業界展望
EVと燃料電池車の課題
さて、では内燃機関の未来はどうなるのだろうか? 当然その疑問の裏側にはポスト内燃機関がある。現状で見る限り、それは燃料電池や電気自動車だろう。どちらも電気をエネルギーにしてモーターで駆動するから、対立構造としては「化石燃料vs.電気」ということになる(とりあえず電気がどういう方法で発電されたかは置いておく)。燃料電池も電気自動車も電気でモーターを駆動するという意味において動力は同じだが、電気の得かたが違う。燃料電池は一般に水素の化学反応による発電システムをクルマに搭載して走り、電気自動車はインフラ電力をバッテリーに蓄積して走る。 しかしバッテリーに致命的な欠点がある。エネルギー密度が低いのだ。エネルギー密度とは同じ重量あたりどれだけのエネルギー量かという意味で、エネルギー密度が低いと長い航続距離を走るためにとんでもない重量のバッテリーが必要になる。そうやって重量の委細構わずバッテリーを大量に積んだのがテスラで、「いや流石にそれは移動体として理性に欠けるでしょう」と、航続距離の方を諦めたのが日産リーフである。例えて言えば、テスラは毎日の通勤に旅行用の大型トランクを使っている状態。リーフは逆に旅行であろうがブリーフケースを使う状態だ。エネルギー密度が低いとこういう問題が起きる。 それもこれも充電に時間がかかるからで、例えリーフのような容量の小さなバッテリーであっても、充電が短時間でできれば問題は解決するが、現実には充電時間は最低30分は必要で、充電の利便性の面ではとても給油と同程度とは言えない。環境性能の面からも移動途中で行う急速充電はエネルギー効率が悪く、エネルギーを無駄にする。つまり電気自動車をエコに使おうと思えば、自宅で緩速充電して、出発したら継ぎ足し充電せずにその航続距離で使うのが理想形である。しかも充電インフラはこれでも日本が世界で最も進んでいる。世界一でもまだまだ十分とは言えない。色々と道半ばなのだ。「バッテリーが進化して解決できる」という声はずっとあるが、期待に対して歩みは遅い。 バッテリーではなかなか解決しないこの問題は、水素発電システムを使い、水素を圧縮して搭載すれば解決できる。水素の充填はガソリンにさほど遅れを取らない程度には早い。燃料補充の実用度ではほぼ合格だ。ほぼと言うのは、何しろ高圧ガスなので、補充員の装備はゴーグルに手袋とF1のピットクルーの様にものものしく、ドライバーは車両から離れて枠線の中で待機するように言われる。トヨタMIRAIが搭載する水素の圧力は700気圧(70MPa)であり、法令の定める高圧ガス保安法の基準=1MPaの70倍にも達する危険物である。首都高などのトンネル部に進入禁止となる規制の更に70倍の高圧ガスである。車両の搭載時だけでなく、水素ステーションへの輸送も含めてまだまだ課題が多い。 さらに水素スタンドの普及は日本ですらまだまだ着手したばかりで、グローバルにみればないに等しいではなく、皆無である。普及までにはまだまだ時間がかかる。