高齢者の孤独死、23区だけで年間4千人以上…自治体による終活支援の取り組みとは?研究員「住む場所でサービスに差が出ないよう国にも動いてほしい」
総務省の人口推計によると、日本の死亡者数はここ数年で増加傾向にあり、2022年には150万人以上の方が亡くなったそう。そのようななか、「高齢化と孤立化で無縁遺骨になる可能性は誰にでもある」と話すのは、朝日新聞記者の森下香枝さん。森下さんによると、「終活情報登録事業を開始する自治体も出てきている」そうで――。 【写真】1500件の相談が寄せられた豊島区「終活あんしんセンター」窓口の様子 * * * * * * * ◆東京都豊島区が23区で初の終活登録 サンシャインシティなど超高層ビルが立ち並ぶ東京・池袋。高齢者でにぎわう巣鴨。2つの街が位置する豊島区は、区と市では、ひとり暮らしの高齢者が日本一多い。 国勢調査(2020年)によると、65歳以上の人口に占めるひとり暮らしの割合は約36%にのぼる。 東京都監察医務院の統計によると、単身世帯で自宅で亡くなる「孤独死」をした65歳以上の高齢者は、2020年に23区内だけで約4200人に達した。 5年前より1千人以上も増えた。 豊島区の2020年の孤独死(65歳以上の高齢者)は137人。5年前は129人だった。 区は「終活あんしんセンター」を開設し、2022年4月から23区では初めて、終活情報登録事業を開始した。
◆豊島区在住の女性 「横須賀市の『わたしの終活登録』についてテレビで見て、こうした制度ができれば、わたしも登録したいと思っていました」と5月末に終活登録した豊島区在住の女性(79歳)は話す。 子どもはおらず、数年前に夫を亡くした。有料老人ホームへの入居も考えたが、親族や友人がいる同区へ引っ越し、持ち家のマンションでひとり暮らしをしている。 女性は、親族や夫の遺産を相続しており、海外で学校をつくる事業に寄付もした。 「身内が少ないので、自分が死ぬと財産が国のものになったら困ると思い、元気なうちに遺言書を作成し、そのことも含めて登録しておこうと思った」と語る。 豊島区では緊急連絡先、献体の登録先、遺言書の保管場所などを無料で登録できる。登録カードを持っていると、病気・事故などで意思表示ができなくなった時や亡くなった場合、警察や消防、事前に指定した相手に登録情報が伝えられる仕組みだ。 女性は区から配布された「終活あんしんノート」に遺言書の保管場所や生命保険の受取人など自身の情報を書き込んでいる。 「延命は望まない。自然死でいい。無宗教なので戒名もいらない。夫が亡くなった時に墓じまいをした。夫を散骨して見送ったので自分も散骨してもらいたい」
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