高齢者の孤独死、23区だけで年間4千人以上…自治体による終活支援の取り組みとは?研究員「住む場所でサービスに差が出ないよう国にも動いてほしい」
◆「2025年問題」 これまでに終活あんしんセンターには約1500件の相談が寄せられた。登録事業を利用したのは60~90代の18人(2022年10月末現在)。うち12人は女性だ。 区によると、身寄りがない高齢者の中には、1億円近い資産を残したまま、自宅でひとりで亡くなる人もいれば、生活保護を受けながらひっそりと亡くなる人もいるという。 終活あんしんセンターの運営を受託している豊島区民社会福祉協議会(社協)の天羽瞬一チーフは「ひとり暮らしの高齢者で認知症など支援が必要なケースが最近、増えている。身寄りがなく、区が後見人を申し立てるケースが以前に比べ、増加している」と話す。 1947~1949年に生まれた「団塊の世代」全員が2025年までに75歳以上の後期高齢者になる。 あと2年あまりで認知症の高齢者や孤独死の増加などが顕在化するとされる「2025年問題」が待ち受ける。こうした中、終活支援の取り組みは都内の自治体に広がりを見せている。
◆社協による終活支援の広がり 練馬区も同種の制度の検討を始めている。20年には286人の高齢者が「孤独死」したという。 青梅市はすでに、葬儀や納骨などを任せられる親族等がいない独居または高齢者のみの世帯で一定の条件を満たす人に、葬儀の生前契約をサポートする事業を行っている。 社協による独自の終活支援も広がっている。2022年度から墨田区社協ではひとり暮らしの人を対象に、見守りから死後の手続きまでを有料でサポートする「すみだあんしんサービス」を開始した。契約時に契約支援料3万円と預かり金150万円を支払えば、3段階にわけて支援が受けられる。 足立区社協、中野区社協、品川区社協、文京区社協も同様に高齢者の見守り、入院時の対応、亡くなった後の事務手続きや遺言書作成などを有料で支援する事業を行っている。 また、武蔵野市福祉公社、調布市社協も同様のサービスを提供している。 終活支援に詳しい日本総合研究所の沢村香苗研究員によると、全国で30以上の自治体と社協が終活支援に独自で取り組んでいる。 沢村さんは課題をこう語る。 「身寄りのないひとり暮らし高齢者の支援をどこの省庁が担当窓口になるかもまだ、決まっていない中、現場を持つ市区町村が国に先んじて対策に取り組んでいる。住む市区町村によって受けられる終活サービスに差が出ないよう国にも動いてほしい」 ※本稿は、『ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
森下香枝
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