声だけで買い物できる「ボイスコマース」が描く未来 2030年には市場1.5兆ドル…新たに生まれる仕事・キャリアは
(3)ボイスコマースプラットフォームの活用事例
日本国内でもボイスコマースの活用は進んでいます。例えば、アマゾンのボイスコマースプラットフォームを活用することで、消費者が一度オンラインで購入した商品を、スマートスピーカーに「もう一度購入して」と伝えれば再購入できる仕組みを作る小売業者や、音声アシスタントによる商品の説明を受けながら、購入も音声で行うボイスコマース体験ができる実店舗など、さまざまな取り組みがあります。 最近では、音声認識と電話を活用したボイスコマースプラットフォーム「テレAI」も登場し、商品に付随した電話番号に電話をかけ、「住所」「名前」「個数」を伝えるだけで通販が完了する仕組みをつくっています。
(4)ボイスコマースプラットフォームで、私たちの生活はどう変わる?
さまざまな活用がされているボイスコマースプラットフォームですが、今後どのような取り組みが期待されているか、特に変化の大きい業界についてご紹介します。 ・通信販売 ボイスコマースが最も影響力を持つのがオンラインショップをはじめとする通信販売です。通常、音声で注文をする際は、注文を受け付ける事業者側もオペレーターを配置する必要がありますが、ボイスコマースプラットフォームは「自動音声が対応し、消費者の声だけで注文が確定」します。そのため、事業者側も新たにコールセンターなどを設置する必要がなく、人の手を介さずに注文を受け付けることが可能になります。ボイスコマースプラットフォームにより、多くの事業者が通信販売事業に参入することが予測されます。 スマートスピーカーを活用したボイスコマースプラットフォームでは、過去に購入した履歴や嗜好から、ユーザーが好むだろう商品をレコメンドしてくれます。自分では見つけられなかった好みの商品を発見できるかもしれません。 電話を活用したボイスコマースプラットフォームでは、使い慣れた電話で商品購入が可能なため、ITリテラシーに関係なく、全世代が問題なく利用できます。そのため、スマートフォンやPCの操作に慣れない高齢者などの、今までECを利用できなかった人も、ECサイトから電話で注文が可能になります。EC利用の裾野を拡大することで、買い物難民を救える仕組みとしても期待されています。 ・商品の受発注 ボイスコマースプラットフォームを活用すれば、過去に仕入れたものを再発注する手間が省けます。現在でもFAXで注文したり、仕入れ先が営業時間内のうちに電話で注文したりする小売店もあると思いますが、ボイスコマースを活用すれば24時間365日いつでも手軽に注文できます。 ・無人店舗 最近増えつつある無人店舗でもボイスコマースを活用できます。消費者は、陳列されている商品の具体的な説明を音声で聞きながら、購入もそのまま音声で行えて、後日指定した住所に商品が届きます。店舗側は在庫を置くスペースを確保する必要がないため、駅の構内やショッピングモールの一角、オフィスといった空間が限られた場所でも商品を販売することが可能です。 ・エンタメ業界 ボイスコマースは自動音声が対応するため、エンタメ業界との相性が良いです。自動音声を芸能人やインフルエンサー、キャラクターの声に変えられるサービスも登場しており、ボイスコマースを通じて「推しの声で接客してもらいながら商品を購入する」という特別な体験が可能になります。今後は音声による販売限定のグッズが登場してくることも予測されます。