じわり広がる観光分野のNFT活用事例、離島の観光客誘致や”新しい”民泊、寺院と書家の芸術イベントまで
空き家資源開発 × DAO的民泊運営
ブロックチェーン技術を活用し金融以外の分野でビジネスを開拓するRECICAは、事業の一つとして、NFTによってDAO(分散型自律組織)的民泊運営および不動産利用、デジタル不動産の融合を実現するサービス「ANGO」を展開している。RECICAのCEO、クリス・ダイ氏は、現在、日本で社会問題となっている全国850万戸もの空き家の有効活用に、「トークンを用いた新しい民泊運営モデルを提案したい」としている。 ANGOのサービスは、ANGOトークンを持つ人々がコミュニティを形成し、その構成員が物件開発や物件の運営に関わりつつ、利用者としても宿泊利用できる仕組みだ。物件開発や運営を手伝えば対価としてトークンを取得でき、宿泊利用にはトークンを使う。つまり「コミュニティのメンバーは物件運営に関わる一員であり、同時のその物件を観光施設として楽しむ利用者でもある」(ダイ氏)わけだ。 営業日が年間約180日以内という規制がある民泊は、経営が難しい。そこでANGOでは、物件の民泊利用を180日以内に抑えつつ、残りの約180日を物件運営者でもあるANGOコミュニティの構成員が利用することで、利用率を最大化できるように工夫した。 また運営者でもあり利用者でもある構成員が、ANGOの施設の情報を発信し市場開拓に貢献。さらに地元在住の構成員は現地での観光の案内役として仕事を得るなど地域での雇用増にも貢献できるメリットがある。ダイ氏は「現在、那須や九十九里、熱海などのリゾートエリアや京都や渋谷などの都市部に計9つの物件を稼働中で、今年中にANGO物件を20軒まで拡大する計画だ」としている。
NFTによって伝統工芸の新たな形を創造
伝統工芸NFT事業「Bank of Craft」は、伝統工芸が抱える課題を、新たなテクノロジーとアイデアの力で解決し、新たな収益性の確保や地域経済や観光の活性化、地域の観光財源作りにつなげるためのプロジェクト。推進するのはJTBとJCBのジョイントベンチャーであるJ&J事業創造だ。 同社で開発本部長を務める荒川淳一氏は、「Bank of Craft」の背景について「伝統工芸には日本人の美意識が反映されているが、経済やライフスタイルの変化によって伝統工芸と生活者との距離が広がり、伝統文化によって引き継がれてきた文化が失われつつある」と指摘。こうした問題を解決するため、「伝統工芸技術とクリエイティブ・アート・デジタルなどと融合して伝統工芸の価値を再構築する」のがプロジェクトクトの目的だとした。 具体的には、伝統工芸の知財やデザインデータをアーカイブするためのプラットフォームを提供し、NFTを活用した知財権管理とブランド認証によるライセンス保護をおこなう。 実際に「Bank of Craft」では知財権管理やブランド認証を始めている。伝統工芸を酒のラベルに活用するのもその一例だ。たとえば沖縄の伝統工芸「琉球びんがた」の工房と泡盛メーカーの瑞泉酒造の組み合わせを「Bank of Craft」が介在して実現。このほか博多織や桐生織の伝統工芸デザインラベルと日本酒メーカーのコラボレーションも実現している。 また伝統工芸のリ・デザイン・コラボレーションにも取り組む。リ・デザインは現代のクリエーターが伝統工芸からインスピレーションを受け、新たなデザインを考案することを意味する。ここでに「Bank of Craft」が介在して、博多織と伊藤園とクリエーターの3者コラボによる自販機デザインや、廃棄ビニール傘の再利用・商品化に際し桐生織にインスパイアされたクリエーターのアイデアを取り入れるなど、具体的な事例が登場している。
トラベルボイス編集部