「不安な人にこそ読んでほしい」 鈴木エイトが傍聴した『HPVワクチン被害』裁判レポート
「接種後に重篤な副反応を引き起こし、薬害として集団訴訟が提起されている危険なワクチン」 【写真】子宮頸がんワクチン 報道の問題点とは そんな認識をいまだに持つ人も少なくない子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)。だが、HPVワクチンについては国内外で有効性と安全性を担保するエビデンスが積み上がっている。国内での大規模な疫学調査によって接種群と非接種群に有意差(症状のオッズ比で有意に1を超えるもの)がなかったことも確認されている。 そんな中で、「HPVワクチン薬害訴訟」を継続的に取材しているジャーナリスト・鈴木エイト氏が8月上旬に発信したSNSでの薬害訴訟レポートが1800万回を超えるインプレッション数となり話題になった。「危険なワクチン」との世間の認識を変えるきっかけとなるのだろうか。 鈴木エイト氏がHPVワクチンと「薬害訴訟」についてレポートする。
HPVワクチン「薬害」報道とその後のエビデンス
HPV(ヒトパピローマウイルス)感染が子宮頸がんなど各種の癌の要因であるとして、発症予防のため開発されたHPVワクチン。 日本では2009年に認可、翌10年11月から13年3月まで「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」が行われた。同年4月に予防接種法が改正されHPVワクチンは定期接種となり、小学6年生から高校1年生の女子を対象に積極的勧奨が行われた。 将来の子宮頸がんを防ぐ目的で子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルスに感染する前、つまりセクシャルデビュー前の女性に接種することが最も効果的とされたためだ。 だが、接種後に体調不良を訴える声が続出、13年3月に被害を訴える当事者の母親たちと日野市議の池田利恵氏が「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」を設立した。厚労省に「副反応疑い報告」が相次いだことで、同年6月に国はHPVワクチンの積極的勧奨を取りやめた。 「被害者連絡会」がマスコミに公開した不随意運動によって手足を痙攣させる少女の映像のインパクトは大きく、各メディアが「ワクチンによる被害」「副反応」として取り上げた。その結果、80%近くあったHPVワクチンの接種率は1%以下に激減した。 連絡会と薬害弁護団により原告団が結成され16年3月30日に集団訴訟を行う方針を発表、会見を開き原告団に参加する「被害者」を募った。4か月後の7月28日に原告一人当たり1,500万円の損害賠償を求める集団訴訟が提起され、車椅子姿で裁判所に入る原告の映像とともに「薬害」として各メディアが大きく報じた。 しかし積極的勧奨中止後、国内外の複数の調査や研究、疫学調査等による科学的エビデンスが蓄積。HPVワクチンの有用性、つまり有効性と安全性が確認され、厚労省は22年4月に積極的勧奨を再開した。