BoPに新システム導入。一定速度以上でのエンジン出力を調整する“2段階式”を公式テストで評価へ
海上輸送コンテナの到着遅延の影響で、2月26~27日に開催が延期されたWEC世界耐久選手権の公式テスト“プロローグ”では、日欧米の計9ブランドが顔を揃えるハイパーカークラスのエントリー車両を対象に、2段階式のバランス・オブ・パフォーマンス(BoP/性能調整)・システムが評価されることが明らかになった。 【写真】マイナス4%の“パワーゲイン”が設定されたランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2 FIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブによって発行された、最新のBoP文書に概要が記載されているこのシステムは、車速が210km/hを超える領域でのパワーレベルを暫定的に変更するものだ。 同文書では9つのハイパーカーそれぞれについて、標準的なパワーレベルと比較して0%の変化がある(つまり変化がない)と記載されているが、Sportscar365は正確な数値が評価目的でハイパーカーチームに伝えられていることを理解している。 BoPの関連文書によるとこのエンジン出力の増減設定、いわゆる“パワーゲイン”は今週末の開幕戦『カタール1812km』では使用されないが、イモラ・サーキットで行われるシーズン第2戦以降は使用される可能性があるという。 さらに、現在は210km/hとされているしきい値も見直しの対象となる。 LM-GTEアマクラスに代わる新しいGTカテゴリーであるLMGT3クラスでも同様のシステムが導入されているが、そのしきい値は200km/hと若干低く設定されている。また、こちらは開幕戦から新システムが適用される予定だ。 ハイパーカーに相当するものとは異なり、LMGT3のBoPテーブルでは9つの異なるGT3モデルの具体的なベース出力(kW)は記載されていない。その代わりエンジンセッティングの違いが「P●●」のかたちで示されているほか、パワーゲインの項目にモデルごとの最高出力の変更率が記載された。 ベース出力からもっとも大きな変更を受けるのはランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2で、200km/hを超えるとパワーが4%低下する。同じく出力が減る方向の調整を受けたのはフェラーリ296 GT3とレクサスRC F GT3だ。この2車種はともに1%のパワーダウンを受け取った。 一方、フォード・マスタングGT3と改良型アストンマーティン・バンテージGT3はプラス2%、BMW M4 GT3とポルシェ911 GT3 Rでは1%の出力増加が認められている。シボレー・コルベットZ06 GT3.Rとマクラーレン720S GT3エボは調整を受けない0%組だ。 BoPの新システムについてFIAからのコメントはなかったが、今週後半にはシリーズの主催者からさらなる説明があることが期待されている。 ■2024年WEC世界耐久選手権 ハイパーカークラスBoP(2月16日付) マシン/プラットフォーム/最低重量/最高出力/パワーゲイン≧210km/h/最大エネルギー量/MGU作動速度(ドライ/ウエット) アルピーヌA424 /LMDh/1070kg/510kW/0.0%/909MJ/―― BMW MハイブリッドV8/LMDh/1060kg/506kW/0.0%/904MJ/―― キャデラックVシリーズ.R/LMDh/1032kg(+2)/499kW(-5)/0.0%/890MJ(-4)/―― フェラーリ499P/LMH/1075kg(±0)/503kW(-2)/0.0%/902MJ(+1)/190kph/190kph イソッタ・フラスキーニ・ティーポ6-C/LMH/1085kg/514kW/0.0%/917MJ/190kph/190kph ランボルギーニSC63/LMDh/1041kg/502kW/0.0%/895MJ/―― プジョー9X8/LMH/1030kg(-11)/520kW(±0)/0.0%/904MJ(-4)/150kph/150kph ポルシェ963/LMDh/1048kg(+2)/505kW(-9)/0.0%/900MJ(-8)/―― トヨタGR010ハイブリッド/LMH/1089kg(+9)/510kW(-4)/0.0%/914MJ(+2)/190kph/190kph ※比較対象は2023年最終戦バーレーン ■2024年WEC世界耐久選手権 LMGT3クラスBoP(2月16日付) マシン/最低重量/最高出力/パワーゲイン≧200km/h/最大エネルギー量 アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3/1318kg/P13/+2.0%/689MJ BMW M4 LMGT3/1321kg/P4/+1.0%/687MJ シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R/1331kg/P5/±0.0%/685MJ フェラーリ296 LMGT3/1331kg/P13/-1.0%/678MJ フォード・マスタングLMGT3/1326kg/P6/+2.0%/696MJ ランボルギーニ・ウラカンLMGT3エボ/1332kg/P15/-4.0%/676MJ レクサスRC F LMGT3/1345kg/P6/-1.0%/698MJ マクラーレン720S LMGT3エボ/1327kg/P9/±0.0%/684MJ ポルシェ911 GT3 R LMGT3/1315kg/P4/-1.0%/685MJ [オートスポーツweb 2024年02月26日]