藤原ヒロシの今月気になったもの、買ったもの『シビル・ウォー アメリカ最後の日』──連載:HIROSHI FUJIWARA WHAT I WANT
当代きっての〝目利き〞として知られる藤原ヒロシが、「気になったもの」や「買ったもの」を紹介。世界中を旅して回る彼が見つけた今月の一品は、服?ガジェット?それともアート? 【写真を見る】それぞれのプライスとディテールをチェック!
藤原 ヒロシ(以下、藤原)今回は『シビル・ウォーアメリカ 最後の日』という映画の紹介です。この映画はアメリカの映画制作・配給会社、A24による作品なんですが、今まで観たA24の映画の中で一番好きですね。 ──A24というと、『ミッドサマー』や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』といったインディペンデント精神に則ったヒネリの効いたホラーやSFが多い印象ですが、この作品はどうなんでしょう? 藤原 いわゆるSFやホラーとは違うけれど、ある意味ではA24の持つユニークさの頂点とも言えるんじゃないかな。 ──映画のストーリーは、〈アメリカが反政府同盟と政府軍に分裂し内戦状態になっている近未来、4人のジャーナリストが大統領の独占取材をするためにNYからワシントンD.C.に向かう。だが、その道中で戦争の恐怖と狂気に巻き込まれ、彼らはついに……〉、みたいな感じですよね。 藤原 そう。そして、それがロードムービーとしても一級品になっている。観る前はトランプ大統領就任からパンデミックに至るまでに起きてきた現在のアメリカ社会の「分断」の問題をテーマにしているんだろうなとは思ったんだけれど、それをロードムービーというスタイルで、移動しながら内戦状態のアメリカの様子を描いているのが素晴らしい。 ──ちなみに以前、この連載で紹介した映画はトーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』なわけで、これもA24によるレストア版です。 藤原 そういえば、そうだね(笑) ──ヒロシさんはA24に対しても興味があるというか、注目している部分はありますか? 藤原 全部の作品が好きなわけではないけれど、ひとつのブランドというか、「次は何が来るかな」みたいな期待感はあります。 ──A24には、いろんなタイプの作品がありますが、どれも単なるエンターテインメントとは言えない部分がありますよね。 藤原 単純なハッピーエンドとかではなく、観る人によって、いろんな考え方や捉え方ができるエンディングの作品がA24には多いと思うんです。そういう意味ではA24らしさというか、独自の色がやっぱりありますね。この『シビル・ウォー』も、どの目線から観るかで感じ方が違うような良いエンディングだったと思います。 ──現在のハリウッドは商業主義全開の映画が以前にも増して多くなったと思うんですが、A24 はコマーシャル過ぎない良質な、あるいは野心的な作品を世に送り出そうとしていると見えます。 藤原 やっぱり、映画好きの人たちが我に返ったんじゃないですかね。「オレたち、もっとマイナーな映画を観て育ってきたじゃん」みたいな(笑)。「映画好きって、エンタメ好きとは違うよね」っていうのがあるんじゃないのかな。 ──ところで、ヒロシさんの好きな映画ってどんなものですか? 藤原 “笑い”が無いもの。基本的にシリアスなものが好きで、コメディ要素はいらないかな。コメディって、せっかく良いテーマを扱っていても、笑いで誤魔化すというか、テーマとなる問題に正面から向き合っていないように思えてしまうんですよね。 ■『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 監督・脚本:アレックス・ガーランドキャスト:キルスティン・ダンスト、ワグネル・モウラ、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニーTOHOシネマズ日比谷ほか10月4日公開。
文・鈴木哲也 編集・岩田桂視(GQ)
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