途上国を「法」で支援する、「日本型」国際貢献が支持される理由
「日本では法律についてその制度趣旨から学べました。またひとつの条文について、Aという解釈、反対のBという解釈、判例はこうですと、法律についてさまざまな意見があることがわかりました」 ベトナムでは法の解釈権は国会の常務委員会というところが独占しており、裁判所はその法律を適用するだけで解釈権をもっていないという。学説というものもない。判例もようやく5年前にできたとか。 ホアイさんはその後博士号を取得、現在はハノイで日本の投資家に弁護士としてアドバイスをする立場である。 「私の仕事は日本人投資家だけでなく、ベトナム経済の発展にも役立つと考えています。またベトナム法と日本法の比較研究も進めていきたい」 名古屋大学では、現在もベトナムからの留学生が学んでいる。修士1年生のグエン・ティ・ガンさん(33)もそのひとり。 「各国の法律を比較するコースに所属しています。私はベトナムの法律を、他の学生はそれぞれの国の法律を紹介する中で、『どうしてこうなのか?』などと聞かれるため、自国の法律をよく知ることができました。また、法律と社会の関係について考える『法社会学』という新しい分野を学ぶ機会も生まれました」
ガンさんは現役のベトナムの司法省職員でもある。話を聞いていると「これは私の国でも使えると思う」など、政策につなげていこうとする姿勢が伝わってきた。 「ベトナムはハーグ条約への加盟を検討しています。条約の批准に向けては、国内法を整備しなければなりません。私の研究が役に立つはずです。また、所属する民事執行局では今後、国の政策として実効性のある計画を作らないといけません。日本で学んだ経験を生かして、提言していきたいです」 日本の法整備支援は、東南アジアだけでなく、ウズベキスタンやコートジボワールなど10カ国に活動領域を広げた。コロナ禍によって現地への移動が難しい中にあっても、オンライン会議を駆使するなどして活動を止めない。どんなときでも相手国に寄り添う姿勢こそが、日本が国際社会にアピールできる大きな価値だろう。