「業績好調」のマツダがタイ市場で抱える懸念、“日系の金城湯池”から生産撤退するメーカーも
日系メーカーにとってタイは、タイ国内向けの生産拠点にとどまらず、ASEANを中心とした輸出拠点でもある。とはいえ、おひざ元での販売台数があまりに振るわなければ、工場の低稼働といった問題が浮上する。 こうした動きがある中、ひそかに関心を集めるのがマツダだ。タイでの販売台数が少ないうえ、直近の減少率も大きいからだ。マツダの2023年度のタイ販売台数は1万4555台で、前年度比で約40%減少している。
2023年11月の中間決算発表の席で、毛籠勝弘社長はタイについて「(ASEANの中で)今一番厳しい状況になっている」と認めたうえで、「我慢の時期が続く」との見通しを語っていたが、不幸にもその通りになった。 ASEAN全体としても厳しい。2023年度は7.7%減の7万2000台。他国が補ってタイ1国より減少率は小さく済んでいるが、2018年度の13万7000台からはほぼ半減の水準だ。 こうした状況下、マツダがタイに置く生産合弁「オートアライアンス(AAT)」の生産実績は5万8881台にとどまっている(2023年度)。2020年11月下旬のマツダのリリースで、AATについて「現在は年間10万台以上のマツダ車を生産しています」と記載されていたことを考えると稼働率が低迷していることが推察される。
中堅日系自動車メーカー幹部は、「生産撤退するのか、マツダの次の一手に注目している」と語る。しかし、マツダがスズキやSUBARUと同じような判断をする可能性は低そうだ。 ■マツダは撤退できない会社 毛籠社長は昨年11月の中間決算発表の場で、「ASEANはマクロで言うと、人口がどんどん将来伸びていく、それからおそらく平均年収もだんだん上がっていくということで、やはり有望市場なのだろう」と語っている。 成熟した先進国を主力とするマツダにとって、成長が期待できるASEANの生産拠点は残しておきたいはずだ。そこはインドという有望市場を持つスズキとは違う。北米一辺倒でASEANでの販売台数がわずかなSUBARUとも異なっている。