不動産開発“初心者”なのに「1000億円」を投資、ジャパネットが握る長崎の“命運”~異例の「民設民営」スタジアムに見る“究極の地元愛”とは~
■社員旅行でプレミアリーグ観戦 先に述べた通り、年間売上高2630億円のジャパネットHDは、スタジアム・アリーナを含む長崎スタジアムシティの建設に最終的に1000億円を投じている。経営判断が下された当時の役員会の様子を岩下社長に聞いたところ、特に反対する向きはなかったという。 ジャパネットHDでは社内でサッカーが話題にのぼることも多く、2012年の「V・ファーレン長崎」JFL→J2昇格時もサッカーの話題で持ちきりだったという。また同社の地盤である長崎県は、かつての強豪「横浜フリューゲルス」(横浜マリノスとの合併で1999年に消滅)の準本拠地でもあり、別の場所で検討されていた「新スタジアム建設構想」に10万2000筆の署名が集まる(2015年1月19日・朝日新聞より)など、土地柄としてサッカー熱がかなり高い。
さらに、スタジアムの建設が明らかになった2018年には「V・ファーレン長崎」がJ1で戦っており(1年でJ2降格)、「約500人でイングランド・プレミアリーグ観戦」という豪快な社員旅行を実施するなど、会社を挙げてサッカーを楽しむ風土があるようだ。スタジアム建設の構想は、社内でも「ロンドンで見たようなサッカー場(トッテナム・ホットスパー・スタジアム)が長崎に誕生するかもしれない」という、岩下社長いわく「ワクワク感」を抱く向きが多かったという。
もともとジャパネットHDは実質無借金経営を貫くほどに安定経営を続けており、通信販売のカリスマ・髙田明氏から髙田旭人・現社長への交代後も、右肩上がりの成長を続けている。十二分な経営体力を持っていたこともあり、他地域のような「公有民営」ではなく、スタジアムを含めた建設費用や運営もすべて自社で行う「民有民営」という経営判断が下された。 ■長崎の未来を背負う存在に 長崎県を拠点に企業として成長していたジャパネットHDは、第2の事業の柱として「スポーツ・地域創生事業」を掲げている。長崎の地域活性化という使命とともに「三菱重工業幸町工場跡」を託された同社にとって、長崎スタジアムシティの収益化は、会社の未来と長崎市の今後がかかった至上命題でもあるのだ。