不動産開発“初心者”なのに「1000億円」を投資、ジャパネットが握る長崎の“命運”~異例の「民設民営」スタジアムに見る“究極の地元愛”とは~
各社の報道によると、この公募に応じたのは5社。「JR九州」「大和ハウス工業」「イオン」「イズミ」など、錚々たる事業者・デベロッパーが動きを見せている。 なにぶん、市街地の4割を傾斜地が占める「さかんまち(坂の街)」長崎で7.5haもの平坦な土地、かつ駅チカ物件を得られるチャンスは、恐らくもうない。市内にお住まいの方に聞くと、当時は「あそこにできるのはイオンモール? それともゆめタウン(イズミが展開するショッピングモール)?」と、跡地活用の話題で持ちきりであったという。
■不動産開発“初心者”のジャパネットに白羽の矢 ジャパネットHDは応札した他企業のような「都市開発」「商業施設運営」といったノウハウはない。しかし同社は1986年に佐世保市で創業した長崎県発祥の優良企業であり、かつ、長崎県唯一のJリーグ加盟チームである「V・ファーレン長崎」の経営権を公募の前年に取得済。地域に愛されるサッカーチームのオーナー企業として、集客の切り札「サッカースタジアムの新設構想」を打ち出す。
同社がノウハウを持たない部分は、「サクラマチ クマモト」などの複合施設開発を手がけたJLLグループ、「パナソニック スタジアム 吹田」「カシマサッカースタジアム」などサッカースタジアムの施工実績がある竹中工務店を協業のパートナーに迎えることで解消された。 さらに同社が打ち出したスタジアム建設に県の商工会議所や経済同友会、長崎市商店街連合会がこぞって支持を表明しており、2018年4月にはジャパネットHD・JLLグループ・竹中工務店が、他企業を制して優先交渉権を獲得するに至ったのだ。
計画決定当時、ジャパネットHD社内ではどのような反響があったのだろうか。 長崎スタジアムシティを運営するリージョナルクリエーション長崎の岩下英樹社長に話を聞いた。 岩下社長はこの時期にはジャパネットHD物流子会社(ジャパネットロジスティクスサービス)の社長を務めており、のちに自身が跡地活用に関わるとは、想像だにしていない。当時の役員会議で「ジャパネットHDが工場跡地の事業者に公募するかもしれない。決まれば事業規模は500億~600億円(当時)」と初めて耳にした際には、「目の玉が飛び出た」「予算のスケール感がピンと来なかった」という。