パンダで変わった「インドア派」の人生。13年写真を撮り続けた男性が見たリーリーとシンシン
上野動物園(東京都台東区)のジャイアントパンダ、雄リーリーと雌シンシン=いずれも19歳=が中国に返還される。繁殖研究目的で中国から東京都が「借りる」形だった。日本に来たのは2011年2月。直後に東日本大震災が起きて以降は傷ついた人々の心を癒やし、3頭の子どもたちとともに多くの人を魅了した。 【写真】海に沈んだクジラの「淀ちゃん」 専門家は、口をそろえて死骸を「骨格標本にしてほしい」と訴えたが… 「海洋投棄」を選んだ理由は、「においと油」
さいたま市のウェブデザイナー高氏貴博さん(46)も、パンダに心をわしづかみにされた一人だ。13年以上毎日のように園に通い、2頭やその子たちの姿を撮影。ブログ「毎日パンダ」で発信してきた。高氏さんの人生はパンダで大きく変わった。(共同通信=江森林太郎) ▽「暇つぶし」で訪れた上野で運命の出会い リーリーとシンシンはいずれも中国・四川省で2005年に生まれた。2011年2月に来日。中国名は雄の「ビーリー(比力)」と雌の「シィエンニュ(仙女)」だった。 翌3月に公募で日本名が決まった。リーリーは漢字では「力力」、シンシンは「真真」と書く。リーリーは「活発で力持ち」、シンシンは「優しい」というイメージが決定理由とされた。 応募数は4万438件。雄雌4点ずつに絞った上で「明るい将来への期待を抱かせるもの」として決まった。リーリーの名は359件、シンシンは127件の応募があったという。 高氏さんが2頭に出会ったのは、来日のフィーバーも落ち着き始めた2011年8月。暇つぶしで園に足を運び、それがリーリー、シンシンとの初対面。その愛らしさと人間のような姿のギャップに心を射抜かれた。 ▽おっとりリーリー、自由なシンシン
当時の印象をこう振り返る。「2頭は子どもらしくよく遊び、よく寝ていた。偉そうにササを食べたり、だらしなく寝ていたりするしぐさにも魅了された」 当初は2頭を見分けられなかった。でも、1カ月もすると顔立ちの違いが分かるようになった。性格の違いから行動パターンまでをつかめるようになった。家族のように感じた。「元気そうだね」「体調はどう」。撮影しながら心の中で語りかけた。 高氏さんから見た2頭の性格はこうだ。「おっとりして優しいリーリー」「おやつに目がなく自由奔放なシンシン」。理想的なカップルに思えた。 2012年、2頭の間に赤ちゃんが生まれる。しかし、6日後に死んでしまった。肺炎だった。それだけに、2017年に雌シャンシャンが生まれた時の感動はひとしおだった。「子どもだったシンシンがお母さんの顔になった」と語る。2021年には双子の雄シャオシャオ、雌レイレイが誕生した。 ▽突然の帰国、「青天のへきれき」