京都水族館で「スタッフのロッカー」開け放題? 遊び心たっぷりな新展示がデビュー
大きな声では言えないけれど、「他人のヒミツを覗いてみたい」と思ったこと、一度、いや二度三度はあるんじゃないでしょうか。 【写真】うんち…?ロッカーに入っている、飼育員さんのマニアックなコレクション 禁じられたものに触れるような、あるいは見るべきではないものをつい覗き見てしまったときのような背徳感を、純真無垢な歓声にあふれる「水族館」で味わえると言ったら?その願望、「京都水族館」(京都市下京区)の新エリア「ミテッテ」で叶います。 取材・文・撮影/脈 脈子 ■ バックヤードの荷物、持ってきました? いきもの・飼育スタッフと来館者の距離を近づけるコミュニケーションの場として、7月20日にオープンした「ミテッテ」。今までもあったチンアナゴやクマノミの水槽に加えて、2つの展示と新ワークショップスペースが追加されたのだが、そのうちのひとつ「飼育スタッフの部屋」が、ほかではちょっと見かけたことのない独特すぎる展示になっているのだ。 同エリアの入り口には、2012年の開館からこれまでのワークショップで制作した工作品がたわわに実ったシンボルツリーがそびえ立つ。そして壁に沿ってカラフルな棚が並んでいるのだが・・・え?ロッカー? いやいや、どうしちゃったんですか京都水族館さん。バックヤードの荷物、こんなところに持ってきちゃってどうするんですか。ということではなく、これこそが「飼育スタッフの部屋」の展示。スタッフさんたちが日ごろ身に付けている装備品がたった今、脱いでハンガーにかけられたようにそこにあり、なかには各々の宝物やこだわりの品がひそやかに収められているのだ。 「コミュニケーション型水族館としての展示を楽しんでもらえたら」と話すのは広報の藤原さん。 設置されたロッカーは更衣室や用具入れでよく目にするタイプとはひと味違い、デザイン性が高い。扉はメッシュ状の加工が施されていて、なかに入っているものがうっすら見え「中を覗きたい」欲が刺激される。 ■ お宝にこだわりの品、そしてうんちまで!? なんとなくプライベート感を醸し出して並ぶ、全部で10の扉。おおっぴらに開けていいと言われてもちょっとドキドキしてしまう。「失礼しまぁす」とほとんど声が出たぐらいのおごそかさで、遠慮がちに手をかけ、ご開帳。 羽毛にヒゲに歯。飼育スタッフならではのお宝がコレクションされている。こうした生き物たちの落としものを、飼育スタッフは日ごろから大切に集めているのだという。いちばん下の段に見えるうんちも・・・?それはさすがに、今回のために準備したレプリカとのこと。 ほかにも、「なるほど、これが必需品なんだな」と納得するようなものや持ち主のルーツに触れられるような書籍などもあり、飼育スタッフのこだわりが垣間見える。さらに、それぞれの説明板も中身の持ち主が担当。その手書きの文字や文章からも個性が伝わってくる。恐ろしいもので、開けたり閉めたりしているうちに遠慮はすっかり消えて、豪快になかを覗き込むように。あがり込んだ村人の家を暴きまくる冒険RPGの主人公になった気分だった。 京都水族館の遊び心が生み出した、飼育スタッフさんといきものを身近に感じられるロッカー展示。中身は時々入れ替わるとのことなので、どんな宝物に出会えるか毎回楽しみに覗き見たい。