「若年性大腸がん」が50歳未満で増加中、4つの初期症状と検査方法を医師が解説
若年性大腸がんの増加状況についての受け止めは?
編集部: 若年性大腸がんが増加している状況についての受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: 近年において、50歳未満で発症する若年性大腸がんが世界的に増えている傾向が見受けられます。主に、肥満と高脂肪食の過剰摂取による影響や、抗菌薬の過剰投与による腸内細菌叢の変化などが原因と推測されています。 若年性大腸がんの増加率が顕著であるアメリカでは現在、大腸内視鏡検診の推奨年齢を従来の50歳から5歳引き下げて45歳とする動きが加速しています。我が国では既に40歳からの便潜血検査が推奨されており、検査自体は自宅などで便を採取するだけの簡便な検査なので、必ず定期的に実施することが重要なポイントとなります。特に、月経など持続的な出血の理由がない男性や閉経後の女性において、直腸出血や体内での慢性的な出血で生じる鉄欠乏性貧血、下痢、腹痛を含む4つの症状がある場合は、積極的に消化器内科や大腸消化管外来などの専門医療機関を受診して相談しましょう。
編集部まとめ
50歳未満の若年性大腸がんが増えていると指摘されていますが、症状と発症リスクの関連では、直腸出血が5.13倍、体内での慢性的な出血で生じる鉄欠乏性貧血は2.07倍、下痢が1.43倍、腹痛は1.34倍でした。さらに、この4つの症状が重なるほど若年性大腸がんと診断されるリスクが高く、1つの場合は1.97倍ですが、3つ以上の場合は約7倍に跳ね上がることがわかっています。こうした兆候を感じたら、便潜血検査の結果とあわせてかかりつけ医に相談してもいいかもしれません。
【この記事の監修医師】
甲斐沼 孟 先生(TOTO関西支社健康管理室産業医) 平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。