日産の第一四半期の営業利益は前年同月比でなんと99%減少……って大丈夫か? 円安解消も含めてアメリカ&中国市場で苦戦を強いられている!!
アメリカでの在庫台数が最高レベルに到達
そして、日産について懸念するべきマーケットが、北米と中国市場です。 まず初めに、北米市場について、とくに問題なのがアメリカ市場の動向です。販売台数は3.1%のマイナス成長であるものの、それ以上に懸念すべきは、在庫車両の増加という観点です。 現在、アメリカ市場の在庫台数は、過去1年ほどで最高レベルにまで到達しており、在庫適正化のためのディーラーに対する販売奨励金や追加のマーケティング活動などによって、販売管理費が大幅に増加しています。具体的には、Q2におけるアメリカ市場単体の販売奨励金や値段改定の影響によって、営業利益に対して747億円ものマイナスの影響が出てしまっており、この四半期の営業利益99%マイナスの大半は、このアメリカ市場の在庫適正化によるものといえます。 そして、ここに為替レートの問題が追加されるわけであり、2024年度においては、昨年度のような極端な円安による収益性改善は通用しなくなっていくことから、まさに、日産の本当の実力が、2024年度通しにおける在庫台数を踏まえた販売台数、および営業利益という数値に反映されてくることになるでしょう。 次に中国市場について、確かに四半期単体の販売台数では3.3%の販売台数増加を記録しているものの、2024年上半期における販売台数では5.4%のマイナス成長です。 他方で注目するべきは、中国市場の全体需要という点です。経済停滞といわれている中国市場ですが、じつは自動車販売台数という観点で、むしろ1.6%のプラス成長を実現しており、やはりそれを踏まえると、日産が中国市場で苦しい戦いを強いられている様子が見て取れます。 この中国市場においては、ここからさらに販売台数を大きく落としていくのではないかと推測されます。日産の中国国内の主要車種の月間販売台数の変遷を見てみると、日産は大衆セダンのシルフィの販売台数に頼り切っているという、いわゆるシルフィ一本足打法を強いられている状況が見て取れます。 そして問題は、このシルフィが属する大衆セダンセグメントの販売動向について、販売台数が低下傾向になる日産シルフィとは反対に、中国BYDのQin PlusとDestroyer 05が、完全に大衆セダンセグメントを支配してしまっている状況です。 その上、BYDが5月末から発売をスタートしているQin LとSeal 06も、6月単体だけで2.5万台と、急速に販売台数を増加中です。Qin LとSeal 06の存在によって、さらにシルフィの販売台数に悪影響を与えるものと推測可能です。 すでに年間生産台数が70万台規模に低下してしまっている中国国内で、さらに生産規模低迷の可能性が出てきているという点は、日産としては極めて深刻な状況にあるわけです。 いずれにしても、日産が発表してきた2024年度第一四半期における決算内容は、極めて深刻な決算内容であることが露呈した格好です。在庫過剰による販売奨励金や値段調整を強いられているアメリカ市場は、円高が進行することによってさらに収益性が悪化する可能性が高く、このことからも、この1~2年ほどの収益性改善の理由は、いわゆる円安マジックなだけだったのではないかと懸念せざるを得ません。 さらに、今回の決算発表ではそこまで注目されていないものの、中国市場は2024年度下半期、アメリカ市場以上に懸念するべき存在になり得ます。シルフィのさらなる販売減速によって大規模な生産能力削減は避けられない情勢でしょう。
高橋 優