サッカー日本代表「“本業”の選手がいないポジション」を狙われたら…「為す術なく敗れてしまう」可能性も
三笘がいれば、左サイドバックはいらない?
センターバックの負傷による未招集についてピックアップしたが、実は左サイドバックがいないのだ。今回招集されたメンバーのなかでは長友が左サイドの経験もあり、今季も所属先で左を務めたこともある。また、左利きの町田もサイドバックを担った経験はあるが、やはりそれなりのクオリティだった。そういった状況で、今回のメンバーには左サイド専属は一切いない。 森保監督としては3バックのシステムを採用し、左サイドは三笘薫に任せればいいと考えているようだ。結果としてそれが最適解で勝利をもたらす可能性は十分にあり、左サイドバック不在問題は杞憂に終わるかもしれない。しかし、本当にそれでいいのだろうか。 招集メンバーを見れば、相手は日本が3バックで臨みサイドには三笘など攻撃的な選手を配置してくることを容易に予想できるが……。
戦術が絞られる=対策されやすい状況に…
今の日本代表の強みには、4バックと3バックを使い分けられる戦術の幅の広さが挙げられる。しかも、起用する選手によってさらに戦術の幅を広げられる。ただ、その方法でしか戦術を構築できないのが弱味といえる。これを踏まえると、今回の招集メンバーを見れば、日本の戦術はかなり絞られることになり、対戦相手にとってはかなり対策がとりやすい。 サウジアラビアとオーストラリアが、勝利のために割り切ったスタイルを徹底した場合、日本は為す術がなく敗れてしまう可能性がある。 サウジアラビアには強烈なアタッカーがおり、サイド攻撃を得意とする。そのことについて森保監督は、「イメージはできている」と語っている。 「まずは相手のことを分析して個々の能力、チーム戦術をしっかりと把握したうえで、対策を練っていかなければいけない。その対策についてはすでに進めています。相手のことについても大切ですけど、我々が個々そしてチームとして持てる力を最大限に発揮できるように戦術的な準備、役割の準備をしなければならないと思っています。サウジアラビアのサイドアタッカーのこともイメージできています。サイドだけでなくて中央からも突破をしてきます。9月の活動ではセットプレーで高さを生かして、そしてデザインしてゴールをねじ込んでくるというところもあり、すべての部分を対策しなければいけないかなと思っています」 メンバー発表会見でそう話した森保監督は、その会見終了後に「サイドの攻防はめちゃくちゃ楽しみにしていただきたい」というコメントとともに不適な笑みを残していった。それはこの10月シリーズの2戦に相当の自信を持っているように見えた。 おそらく今回の日本代表は攻撃的な3バックのシステムを貫き、勝利を目指すのだろう。ひょっとすると、ガチンコの打ち合い勝負になっても打ち勝つ想定をしているかもしれない。となると、今回の2戦では多くのゴールが見られる派手な試合になりかねない。一般人にもわかりやすい内容でファンの心をつかもうと企んでいるなら、森保監督は想像以上の策士である。 <TEXT/川原宏樹 撮影/松岡健三郎> 【川原宏樹】 スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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