川崎・鬼木監督

◇記者コラム「Free Talking」 　サッカーのＪ１川崎フロンターレの鬼木達監督（５０）が、任期満了により今季限りで退任することが明らかになった。２０１７年の監督就任から８シーズンで獲得したタイトルは７つ。今季こそ就任後２度目の無冠となったが、「良いチーム」を、さらに「勝てるチーム」とした指揮官の功績に異を唱える人はいないだろう。 ◆乱入者のシュート、その行方は…!?【写真】 　グラウンドから引き揚げるのはいつも最後。居残りでトレーニングする若手らにも目を配り、選手らは「監督はいつも見てくれている」と信頼を口にした。午前９時開始の練習で、グラウンドを後にするのが午後２時すぎというのも珍しくなかった。 　選手たちから「オニさん」と慕われた熱く優しい人柄とともに印象深いのが愛用していた腕時計。川崎のチームカラーがサックスブルーにもかかわらず、左手首で存在感を放っていたのは真っ赤な「Ｇ―ＳＨＯＣＫ」だった。 　Ｊリーグが開幕した１９９３年、千葉・市立船橋から高卒でＪリーガーの第一歩を踏み出したのが、赤がチームカラーの鹿島アントラーズ。「別にレギュラーではなかったけど、鹿島で学んだことは自分の中では大きい」。川崎を率いて何度も対戦した古巣に向けられた言葉からは、特別な感情があることがうかがえた。 　「勝つチームの空気感を肌で感じられた」。鹿島で得た財産を、そう語ったこともある。試合よりも大変だったというトレーニング。選手同士がライバル心をむき出しにしながらも、最後は一つにまとまる団結力。赤い腕時計は、勝者の「原点」をたたき込んでくれたクラブへの敬意や愛着の象徴にも感じられた。 　勝負強さに欠け、“シルバーコレクター”とやゆされた川崎は鬼木政権で２度のＪ１連覇を成し遂げるなど「常勝」と言われるまでに。対してＪ最多２０冠を誇る名門は１６年を最後に７季連続で国内タイトルから遠ざかり、今季も無冠が濃厚と往年の輝きはない。今月に入ってポポビッチ監督が成績不振で解任され、中後雅喜コーチが後を継ぐなどばたついている。 　来季以降も指導者を続けていく意向だという鬼木監督。真っ赤な「Ｇ―ＳＨＯＣＫ」は次の職場を暗示しているのかもしれない。（サッカー担当・）