「最悪のシナリオは60%関税」…トランプ氏の帰還に緊張する中国(1)
トランプ前米大統領のホワイトハウス復帰に中国が緊張している。トランプ氏が選挙期間中に何度か高率の対中国「関税爆弾」を予告したからだ。 実際、中国の専門家らはトランプ2期目の高関税を最大の挑戦に挙げている。ただ、「トランプ発の危機は積極的な交渉にかかっている」という見方も少なくない。一部ではトランプ2期目は機会という声も出ている。同盟を軽視するトランプ氏の態度のため、中国を包囲している米国中心の複数の同盟体制を弱化できるという点でだ。また、北朝鮮と交渉経験があるトランプ氏を活用して北朝鮮問題を解決しようという意見もある。 トランプ氏の当選直後と11日に、中国外交戦略に精通した外交学院の蘇浩名誉教授、中国の代表的なシンクタンク「中国国際化センター(CCG)」の王輝耀理事長に電話でインタビューした内容を整理した。 --トランプ2期目の米中関係を予想してほしい。 蘇氏=中国はトランプ氏を相手にした経験がある。トランプ氏は話したことを実際に執行する強い行政力を持つ政治家だ。政治的な不確実性とは違い、対中国貿易赤字を解消するとして取り出した関税カードは確実な要素だ。韓国・日本など米国の同盟も関税の例外ではない。共同の対応が必要だ。 王氏=トランプ氏の復帰は中国にとって挑戦であると同時に機会だ。トランプ氏は大統領選挙の遊説で「平和の大統領」を何度か強調した。ロシアおよび中東国家の最大の貿易パートナーでありサウジアラビアとイランの和解を主導した中国の協力がなければ、こうした約束を履行することはできない。 --北朝鮮のロシア派兵で韓半島(朝鮮半島)の危機が高まっている。帰ってきたトランプ時代に韓半島問題はどうなるだろうか。 蘇氏=(まずは)北朝鮮が極端な行動をする原因を分析しなければいけない。韓国との安保競争で戦略的抑止力を強めようとする交渉カード(用)の側面がある。トランプ氏は韓米同盟を調整する可能性が高い。また朝鮮半島の安定は中国と米国の利益が一致する部分だ。中国と韓国、米国が共に北朝鮮が高めた緊張を管理・統制しなければいけない。 王氏=トランプ氏は1期目に北朝鮮の核問題の解決を支持した。南・北・米・中が参加する4者会談を推進することが可能だ。 --中国経済が厳しい状況でトランプ氏は60%以上の対中国関税を公約した。 蘇氏=中国に対する追加の関税は米国にインフレーションを招く諸刃の剣となる。中国はこれを深刻に受け止めていて、具体的な分野別の影響を科学的に研究し始めた。韓国・日本など国際分業構造を持つ国との意思疎通が必要だ。 王氏=トランプ氏は米国に向かう輸出路であるメキシコの工場に100-200%の関税を課すと言ったが、対米投資は歓迎した。中国も米国(現地)投資に比較的開放的だ。直接投資を望む中国企業は少なくない。バッテリーを製造するCATL(寧徳時代)が代表的な例だ。(今回の大統領選挙勝利の最大の貢献者である)イーロン・マスク氏が関税問題でトランプ氏に実用的な接近を説得することが可能とみている。 --バイデン大統領の就任の翌日、中国はトランプ1期目の人物28人を制裁した。当時のリストにいる人物の中に2期目の国務・国防長官候補もいる。 蘇氏=正常な関係と意思疎通に役に立たないだろう。人事が終わった後に水面下交渉で解決できるとみる。 王氏=米国も新疆ウイグル人権問題、香港(民主主義脅威)などを理由に多くの中国政治家を制裁リストに含めた。相互解除を議論することができると考える。 --トランプ氏は台湾問題をどう扱うだろうか。 蘇氏=台湾は中国にとって非常に敏感な問題だ。台湾の政治家が分離主義を追求すれば中国は軍事的手段まで使うしかない。米国は軍事衝突が発生する場合、中国に勝てるという確信がない。トランプ氏が台湾への武器販売を増やせば対立の局面が深刻化するはずだ。 王氏=トランプ氏は「台湾が米国の半導体技術を盗んだ」と話したことがある。(台湾に対する)保護費にも言及した。米国が「一つの中国」を遵守すれば現状維持を基盤にガードレールを決めて安定を維持することができる。