「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子-ピュシスについて」がアーティゾン美術館で11月から開催。クロード・モネ、 アンリ・マティス、パウル・クレー等と時代を超えた共演
第60回「ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」の日本館展示に選出された毛利悠子の活動を、コレクション作品からインスピレーションを得た新作を交えて、国内初の大規模なスケールで紹介する
アーティゾン美術館で「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子-ピュシスについて」が開催される。会期は11月2日~2月9日。 2020年の開館以来、毎年アーティゾン美術館で開催されている、石橋財団コレクションとアーティストとの共演「ジャム・セッション」展。第5回目となる本展は、国際的なアートシーンで注目を集めるアーティスト、毛利悠子を迎える。 毛利は、 主にインスタレーションや彫刻を通じて、磁力や電流、空気や埃、水や温度といったある特定の空間が潜在的に有する流れや変化する事象に形を与え、立ち会った人々の新たな知覚の回路を開く試みを行っている。 本展タイトルの「ピュシス」は、通例「自然」あるいは「本性」と訳される古代ギリシア語。「万物の始原=原理とはなにか」という問いを生み出した初期ギリシア哲学では、「ピュシス」が中心的考察対象となっていた。生成、変化、消滅といった絶えず変化するみずみずしい動静として世界をとらえる彼らの姿勢は、毛利のそれと重ねることができる。新・旧作品とともに、作家の視点から選ばれた石橋財団コレクションと並べることで、ここでしか体感できない微細な音や動きで満たされた静謐で有機的な空間に来場者を誘う。 見どころは、現代日本を代表するアーティストの国内初となる大規模展であること。近年数多くの国際展に参加し、 世界のアートシーンで注目を集める毛利は、第60回「ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」(4月20日~11月24日)の日本館展示に選出された。彼女の活動を、 アーティゾン美術館の空間に合わせてアップデートする既発表作品と、コレクション作品からインスピレーションを得た新作を交えて、国内初となる大規模なスケールで紹介する。 「ジャム・セッション」は、もともとミュージシャンが即興的な演奏を行うことを意味しているが、毛利は「インプロヴィゼーション(即興演奏)」や現代/実験音楽の「エラー」や「フィードバック」 を作品空間に組み込み、振幅やゆらぎ、変動や不確定さを重視してきた。作家がコレクションから選んだ、クロード・モネ、 アンリ・マティス、パウル・クレー、ジョルジュ・ブラック、マルセル・デュシャン、ジョゼフ・コーネル、藤島武二といった作家と時代を超えた創造性の交わりを観ることができる。 大量生産・大量消費を是とし「コントロール/制御」を軸に効率重視で発展してきた産業を中心とする社会がもたらす環境問題に対して、これまでとは異なった思考法が要請されている。「エラー/不制御」や即興的な展開、 磁力や電流、空気や埃、水や温度といった微細な環境の要素を作品に取り入れる毛利の姿勢は、見えない流れ/変化に対する私たちの感度を高め、環境問題への向き合い方のささやかなヒントとなるだろう。
Art Beat News