SAFだけじゃない、JALとANAが取り組む「環境技術革新」のすべて
JALとANAは、2030年までに2019年比でCO2を10%削減し、2050年にネットゼロを目指す。JALは電動航空機や水素燃料技術に投資し、都市型モビリティと宇宙開発を進める。ANAはSAF利用を中心に環境負荷軽減を図り、宇宙事業化に取り組む。両社とも異なるアプローチで持続可能な航空業界を目指しているが、共通の目標として環境対応と技術革新を進めている。こうした両社の環境技術開発の現在地について詳しく解説する。 【詳細な図や写真】ユニバーサルハイドロゲンの水素燃料電池航空機(出典:ユニバーサルハイドロゲン)
JAL・ANAの環境対応目標とは
両社ともに短中期のCO2削減目標として2030年までに2019年比-10%、長期として2050年でネットゼロの目標を掲げる。現行エンジン機から新世代機への移行は相当の時間がかかることが予測されており、その間SAF(持続可能な航空燃料)の利用でCO2を削減する。 また両社は、旅客輸送に供する新世代機の研究の前段階として都市間輸送に最適な空飛ぶクルマ(アドバンストエアモビリティ/AAM)の研究を始めた。想定としては、街中の駅などから空港までの輸送を担うものだ。
JALが開発進める電動航空機とシーグライダー
JALは、2023年10月6日、電動航空機の開発を進める米「リージェント・クラフト」と包括提携協定を締結し、地面効果翼機「シーグライダー」への投資を始めた。翼と水面の間に閉じ込められた空気のクッション「地面効果」により水上数メートル上を飛行する航空機の1つで、その利便性や完全電動によるゼロエミッションを実現することが注目されている。 現時点で1/4スケールの試験機の実験が終わり、2024年中にフルスケールの実証機に人員を搭乗させる計画だ。この機体は、12人乗りで300km/hの速度で300kmの航続距離がある。 さらに、同社は2023年11月16日に水素航空機の開発を行う独「H2FLY」、米「ユニバーサルハイドロゲン」と同国「ゼロアビア」のスタートアップ企業3社と、それぞれ基本合意書を締結した。水素燃料電池と電動のハイブリッドとすることで、CO2排出を大幅に削減する技術である。協業する各社は、水素電池を燃料の一部として使用した飛行試験をすでに実現し、2020年代半ば~2030年代に商用化を予定しているという。 こうしたJALの積極的なイノベーションの下支えには、専門組織の存在があった。