「植田ショック」後、市場との対話は?自民党総裁選と利上げの行方
7月末の日銀の金融政策決定会合で利上げを決めた後、円高になり、日経平均株価は8月1日から5日までの間に7600円以上も値下がりしました。その後も前の水準には戻ってはいません。 このときは日銀が、コミュニケーションに失敗したと言われました。「植田ショック」と呼ばれる事態になってしまった。 前の黒田総裁は元々サプライズが好きで、市場を大きく動かすことに躊躇はなかったんです。でも植田総裁は就任以降、丁寧に市場と会話をすると、市場が安定することが日本経済にとって良いんだと、丁寧なコミュニケーションを心がけていたと思います。
ところが、4月の会見で、記者との会話の中で、そのとき問題になっていた円安の是正に日銀が動くつもりがないと受け取られました。為替は日銀の政策の直接のターゲットではないですが、会見のあと円安がどんどん進み、政府の為替介入につながりました。総裁と岸田首相との会談もありまして、日銀まずかった、という感じになりました。 次に7月です。このときは追加の利上げをしましたが、その後の会見が、その後も金利を上げていくぞと「タカ派」の印象を与えたんです。アメリカの経済指標が弱いなどの要因もあって、急激な円高と株安が進みました。総裁が、国会の閉会中審査に呼ばれるということにもなりました。 ――なかなか日銀の真意が伝わらなかったっていうことなんですかね。 植田さんは、20日の会見でも、批判があるのは承知していると。
■日銀に必要な3つのコミュニケーション
日銀は、主に3つの相手とうまくコミュニケーションを取る必要があると思います。 まず、市場とのコミュニケーション。20日のやり取りでもあったように投資家や記者に真意がうまく伝わらなかったいうことが総裁の口からも出ていました。 それから、政府や政治とのコミュニケーション。円安が進んだのは日銀のせいだと見られるような状況にもなりましたし、政治家からバラバラに様々な、金融政策についての発信もありました。国会にも呼ばれたということで、政府や政治とのコミュニケーションもうまくとれなかったと言えると思います。 もう一つ、世界の金融の中も、やはりコミュニケーション大事なんです。8月下旬にあったアメリカのジャクソンホールでの会議を植田総裁は欠席しました。これは国会に呼ばれた日と重なっているんですけれども、国会に呼ばれる前にもう欠席が決まっていました。体調が良くなかったという話もあります。このときは、日本の為替介入や利上げについて国際的にも関心を持たれていましたので、説明するチャンスでした。アメリカの利下げを前にどういう状況なのかと、国際金融のトップの人たちと話をして情報を仕入れるチャンスでもあったんです。ところが欠席ということで、国際金融でのコミュニケーションもあまりうまく取れてない状況になっています。 ――なかなか各方面でコミュニケーションがうまくいっていないように見えるということですね。 植田総裁が大事だと言っていたコミュニケーションが4月以降は各方面でうまくいってないと。20日の会見でも、情報が十分じゃないぞという印象を持つ記者から質問が飛んでいました。